株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

甲状腺分化癌と分子標的治療薬

No.4755 (2015年06月13日発行) P.52

日比八束 (藤田保健衛生大学内分泌外科准教授)

登録日: 2015-06-13

最終更新日: 2016-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

甲状腺分化癌に対する抗癌剤には従来有効なものはなく,再発病変に対する治療では,これまでは甲状腺ホルモン薬投与によるTSH抑制療法や放射性ヨード内用療法が行われてきた。しかし,前者ではその有効性のエビデンスは十分確立されておらず,後者では施行可能な施設がわが国では限られており,また病変がヨードを集積しなければその効果を期待できない。
近年,がん治療に分子標的治療薬が普及してきており,このうちキナーゼ阻害薬ソラフェニブは世界で初めて甲状腺分化癌に対する分子標的治療薬として,第3相臨床試験(DECISION試験)を経て米国,欧州で承認され,2014年6月にわが国でも「根治切除不能な分化型甲状腺癌」に対し,厚生労働省から適応追加が承認された。
DECISION試験ではソラフェニブ群はプラセボ群と比較して,無増悪生存期間を有意に延長し(ハザード比=0.59[95%CI;0.45~0.76], P<0.0001),無増悪生存期間はプラセボ群で5.8カ月であったのに対し,ソラフェニブ群では10.8カ月で,奏効率はそれぞれ0.5%と12.2%という結果であった(P<0.0001)(文献1)。ただし,現段階ではその安全性は甲状腺全摘術を受けた後,放射性ヨード治療抵抗性が証明された症例にしか確立されていない。また,ソラフェニブには手足症候群など患者のQOLを低下させる副作用も高頻度に認められるため,投与する患者の選別に慎重を期する必要がある。
同じく,キナーゼ阻害薬レンバチニブが2015年3月に承認された。

【文献】


1) Brose MS, et al:Lancet. 2014;384(9940):319-28.

関連記事・論文

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top