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頭蓋顎顔面領域の骨延長術

No.4745 (2015年04月04日発行) P.53

奥本隆行 (藤田保健衛生大学形成外科臨床教授)

登録日: 2015-04-04

最終更新日: 2016-10-26

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骨延長術は1951年,ロシアのIlizarovによって開発された創外固定器を用いた複雑骨折の骨固定や偽関節治療に始まり,1988年同氏により仮骨延長法としての術式が確立されて以降,整形外科領域で主として四肢の長管骨の延長に用いられ,発展を遂げてきた。形成外科領域では1992年,McCarthyらが第一第二鰓弓症候群の下顎骨低形成に応用した報告が最初で,その後,骨延長術は上顎骨や頭蓋骨など,あらゆる頭蓋顎顔面領域の骨変形性疾患の治療に用いられるようになっている。
この技術は骨切り部を挾んで留置した骨延長器により,骨切り部分の治癒過程に生じる仮骨を牽引し延長することで骨の増量を図る方法であり,生体の再生機能や機械刺激に対する生物学的反応を利用したものである。骨延長のスピードは部位にもよるが,1日当たり1~1.5mmであり,延長終了後は骨硬化が完成するまで2カ月程度を要する。
その長所は,自家骨や人工骨の移植を必要とせず,基本的に骨の移動量に理論上制限がないことであり,また延長が漸進的であるため,周囲の軟組織も増量されるところにある。一方,短所は治療期間が長いことであり,装置を除去するための手術も必要となる。また,装置が体表に露出しているために日常生活の制限があったり,感染によるリスクもある。ただし,従来の骨切り術や骨移植術では治療困難であった高度変形症例,特に先天異常例や小児例にも適応可能であり,治療の可能性を大きく広げることができている。

【参考】

▼ 奥本隆行:日臨別冊. 神経症候群(第2版)Ⅵ. 水澤英洋, 編. 日本臨牀社, 2014, p174-6.

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