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漏斗胸の手術・非手術治療

No.4741 (2015年03月07日発行) P.49

工藤博典 (東北大学病院小児外科)

仁尾正記 (東北大学病院小児外科教授)

登録日: 2015-03-07

最終更新日: 2016-10-26

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漏斗胸は胸骨と下部軟骨が陥凹している状態で,肋軟骨の変形が原因と考えられている。発症頻度は約1000人に1人で,男児に多い。呼吸器症状,易疲労感,胸痛などを呈する症例も認めるが,多くは無症状で,むしろ陥凹によるボディイメージに由来する精神的苦痛が問題となることが多い。診断は視診にて行われるが,陥凹の程度はX線写真やCTによって評価される。軽度なものでは経過観察となることが多いが,重度の陥凹例や有症状例では治療の対象となり,手術が施行される。
これまでは,変形した肋軟骨を切除して挙上するRavitch法や胸骨翻転術が主であったが,前胸部創が目立つこと,骨癒合に伴う合併症などが問題であった。その後,一部の施設で,小切開で変形の著しい肋軟骨のみを切除して切除断端を縫合する,胸肋挙上術が行われた。さらに最近では,肋軟骨切除を行わず前胸部創が残らないNuss法が盛んに行われるようになった。これは,陥凹している胸骨の背側に金属バーを挿入し,背側から前方へ胸骨を挙上し,2~3年後にバーを抜去するというものである。
一方,非手術治療である陰圧療法が近年導入された。これは,vacuum bell(VB)と呼ばれるベル型の器具を前胸部に当て,吸引圧をかけることで胸骨陥凹部を挙上する方法である。個人差はあるが,毎日使用することで通常1~3カ月で治療効果が現れる。学童期以前の患者など,本人の協力が得られない場合には効果の乏しいことが問題点と言える。VB購入に11万円程度の個人負担が生じるが,入院・手術などを一切要さないため,高い安全性と整容性のみならず,医療経済的効果の面でも有用な方法と思われる。

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