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遺伝子組み換えTSH(rhTSH)製剤の臨床導入

No.4738 (2015年02月14日発行) P.60

田中克浩 (川崎医科大学乳腺甲状腺外科講師)

紅林淳一 (川崎医科大学乳腺甲状腺外科教授)

山本 裕 (川崎医科大学乳腺甲状腺外科講師)

野村長久 (川崎医科大学乳腺甲状腺外科講師)

登録日: 2015-02-14

最終更新日: 2016-10-26

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遺伝子組み換えTSH(rhTSH)製剤は,2008年12月に分化型甲状腺癌に対し甲状腺全摘・準全摘術を施行された患者への放射性ヨウ素(123I)シンチグラフィーと血清サイログロブリン(Tg)試験の併用またはTg試験単独での診断の補助薬として薬価収載された。12年5月には,分化型甲状腺癌で甲状腺全摘・準全摘術を施行した遠隔転移を認めない患者の残存甲状腺組織への123Iによるアブレーションの補助薬としての効能が追加された。
甲状腺を摘出した甲状腺癌患者には,123Iの集積やTg試験が転移巣あるいは残存甲状腺組織の同定に有用である。また,甲状腺摘出後は甲状腺ホルモン補充療法により,TSHの分泌が減少する。甲状腺由来細胞のI摂取やTg産生にはTSHによる刺激が必要なため,TSH分泌を復活させるには甲状腺ホルモンの投与を一時的に中止しなければならない。しかし,休薬により甲状腺機能低下が生じ,少なからず患者に苦痛を与えてしまう。そこで,rhTSHを事前に筋注することで,甲状腺ホルモン製剤投与を中止せずに検査が可能となる。
米国,EUでは承認されており,国内臨床試験でも従来の甲状腺ホルモンを中断する方法と比べ,同等かそれ以上の優れた結果が得られている。『甲状腺腫瘍診療ガイドライン』(文献1)においても,甲状腺全摘・準全摘後の再発診断,残存甲状腺床の確認,アブレーションの前処置に対するrhTSHの使用は「強く勧められる」と評価されており,適正に使用する必要がある。

【文献】


1) 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会, 編:甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2010年版. 金原出版, 2010.

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