株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

糖尿病合併症予防に制御性T細胞が与えるインパクト

No.4737 (2015年02月07日発行) P.50

濵口真英 (京都府立医科大学内分泌・代謝内科)

登録日: 2015-02-07

最終更新日: 2016-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2型糖尿病の病因の1つであるインスリン抵抗性の原因として,内臓脂肪組織への脂肪蓄積異常から生じる慢性炎症が重要であることが明らかとなってきた(文献1)。この免疫学的機序として,内臓脂肪組織から放出されるアディポサイトカインが単球を刺激,マクロファージへと分化を促し,内臓脂肪への浸潤を促進することが従来考えられてきた。近年はこのマクロファージの持続的活性化にヘルパーT細胞,特にTh1が大きな働きをしていること,ヘルパーT細胞の活性化により制御性T細胞に免疫抑制機能の低下があることが注目されてきている(文献2)。
制御性T細胞は自己免疫寛容に能動的に働き,免疫恒常性の維持に必須な細胞集団であるが,近年,組織在住制御性T細胞の重要性が注目されてきている(文献3)。特に糖尿病の重要な合併症でもある動脈硬化においては,動脈硬化巣で制御性T細胞が十分にマクロファージを抑制できないことにより,マクロファージの泡沫化,動脈硬化巣の不安定化を招き,心血管事故発症の原因となっていることが明らかになってきた(文献4)。
今後,制御性T細胞が糖尿病自体にどのように関与するか,細小血管障害にどのような役割を果たすかが明らかとなり,制御性T細胞が糖尿病合併症予防の新規標的となる可能性を秘めている。

【文献】


1) Xu H, et al:J Clin Invest. 2003;112(12):1821-30.
2) Hamaguchi M, et al:Cell Metab. 2012;16(1):4-6.
3) Feuerer M, et al:Nat Med. 2009;15(8):930-9.
4) Sasaki N, et al:J Atheroscler Thromb. 2012;19 (6):503-15.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top