株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

同種顔面移植術

No.4733 (2015年01月10日発行) P.50

光嶋勲 (東京大学形成外科・美容外科教授)

登録日: 2015-01-10

最終更新日: 2016-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2005年にフランスで施行された世界初のヒト同種顔面移植(文献1)では,イヌ咬傷による顔面部分欠損患者に対して脳死患者から顔面の皮膚,皮下組織,表情筋,顔面神経,三叉神経を含めた組織が移植され,良好な結果を得ている。
2007年,フランスのアンリ・モンドール病院において,男性神経線維腫症患者に対する全顔面移植が行われた。世界で3例目になる顔面移植手術であるとともに,世界初の全顔面移植の成功例となった。2008年12月には,46歳女性に対して米国初の顔面移植が行われた(文献2)。この女性は夫から散弾銃で撃たれて顔面を損傷したが,形成外科医のSiemionowらが中心となって医療チームをつくり,交通事故で死亡したドナーの顔面を移植,22時間かけて顔面の80%に及ぶ移植術は成功した。2013年のポーランドの症例は石材を切る機械で顔面を損傷した男性患者で,脳死患者からの上顎骨を含めた移植が行われ,素晴らしい結果が得られている。
手の同種移植も1998年にフランスで施行され,現在までに30例以上が報告されている。
これらの同種移植の問題点は,皮膚は生体内で最も抗原性の高い組織であるため,腎臓・心臓・肝臓などの臓器移植に比べてより強力な免疫抑制が必要となることである。免疫抑制は一生継続する必要があるため,易感染性,悪性腫瘍の発生といった重篤な副作用を軽減するための様々な研究がなされている。

【文献】


1) Devauchelle B, et al:Lancet. 2006;368(9531): 203-9.
2) Siemionow M, et al:Lancet. 2009;374(9685): 203-9.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top