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幹細胞とがん

No.4703 (2014年06月14日発行) P.61

近藤 亨 (北海道大学遺伝子病制御研究所幹細胞生物学 教授)

登録日: 2014-06-14

最終更新日: 2016-10-26

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幹細胞研究の進展に伴い,幹細胞とがん細胞に多くの共通点が発見されている(文献1,2)。たとえば,がん細胞は幹細胞マーカーや幹細胞維持に関わる因子群を発現し,幹細胞はがん細胞と同様の増殖能力と抗癌剤等の細胞傷害性因子排出能力を有している。さらに,両細胞はともに低酸素環境下に順応する。これらの事実は,悪性腫瘍に幹細胞の性質を有するがん細胞“がん幹細胞”が存在することを示唆している。
現在まで,以下の3つの研究方法により,がん幹細胞の同定と性状解析が進められている。
(1)幹細胞の性状を利用してヒト腫瘍・がん細胞株からがん幹細胞を調整・解析する研究,(2)試験管内でがん幹細胞を作製・解析する研究,(3)遺伝子改変マウスを用いた生体内がん幹細胞の誘導とその性状を解析する研究,である。
これらの研究成果を利用してがん幹細胞を標的とした新規治療法の開発と治療薬の同定が進められ,それらを用いた臨床試験も始まっている(文献3,4)。ヒポクラテスが名付けたとされる“キャンサー”の克服が今後大いに期待される。

【文献】


1) Reya T, et al:Nature. 2001;414(6859):105-11.
2) Jordan CT, et al:N Engl J Med. 2006;355(12): 1253-61.
3) Gupta PB, et al:Cell. 2009;138(4):645-59.
4) Chan CH, et al:Cell. 2013;154(3):556-68.

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