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夏季のアトピー性皮膚炎悪化対策

No.4715 (2014年09月06日発行) P.63

室田浩之 (大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科学講座准教授)

登録日: 2014-09-06

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

夏季のアトピー性皮膚炎悪化対策はどのようにすればよいでしょうか。大阪大学・室田浩之先生のご教示をお願いします。
【質問者】
石氏陽三:東京慈恵会医科大学皮膚科

【A】

ここでは夏特有の汗および紫外線対策に関する私案をご紹介します。
夏季は暑熱適応のため発汗量は増加します。大量に出る汗の組成は不感蒸泄と違い,塩素イオン,ナトリウムイオン, 重炭酸イオン(アルカリイオン)の濃度が増加します。その結果,汗は比較的多量の塩分を含む上に汗のpHは不感蒸泄として出る水分に比べ高めになります。pHの高い汗は皮膚表面の洗浄能力に優れるため,皮膚の汚れを多く含んでいます。このような汗が関節の屈側や窪んだ場所などに溜まりますと,皮膚炎の誘発や悪化につながります。
汗をたくさんかいたときはシャワー,水道水で速やかに洗い流す,おしぼりなどで汗を拭き取る,また汗で濡れた衣類を着替えることが大切です。肘窩に皮疹がある場合,手洗いの際,同時に肘まで流水で洗うよう指導しています。
汗には皮膚の加湿効果があるため,汗をかけばかくほど皮膚は潤います。ところが,アトピー性皮膚炎では皮膚表面の保水機能低下に伴い,汗の量が角層水分に反映されにくいのです。たとえ夏でも,汗の加湿効果を引き出すには保湿外用薬による皮膚保水機能のサポートが大切です。
次に,日焼けについて考えてみます。患者さんには状況に応じて日焼け対策を行ってもらいます。皮膚に適量の日光を浴びることも大切です。ビタミンDの合成に少なからず貢献しますし,特定波長の紫外線は皮膚の痒みや炎症を抑止するため,難治なアトピー性皮膚炎治療のツールとして日常診療でも用いられています。そのため,むしろ日光浴は好都合にも思えます。
しかし,夏季の強い日差しに長時間さらされると日光熱傷や皮膚温上昇を招き,皮膚炎症状の悪化が懸念されます。ですから,夏季の野外活動(海水浴やプール,運動会,キャンプなど)では適宜直射日光を防ぐ着衣〔長袖シャツ,ラッシュガード(主にマリンスポーツで用いる上半身用の保護衣服)など〕,あるいは必要に応じてサンスクリーン剤の使用を指導しています。

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