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LED照明の安全性とは?【節電にはなるが人体への影響はどうか】

No.4802 (2016年05月07日発行) P.66

大林賢史 (奈良県立医科大学地域健康医学講座特任講師)

佐伯圭吾 (奈良県立医科大学地域健康医学講座学内講師)

登録日: 2016-05-07

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

LEDのブルーライトは眼や睡眠など,人体へ影響があると言われています。医学的な観点から,照明がLEDのみになっても安全なのでしょうか。 (岡山県 N)

【A】

約140年前にトーマス・エジソンが白熱電球を完成させて以来,人間が夜間に浴びる光の量は増加の一途をたどっています。植物や動物だけでなく,人間も光情報を最も重要な外部環境因子の1つとして利用しています。夜間の光曝露で,メラトニンという睡眠を促す作用を持つホルモンの分泌が抑制されることがよく知られています(文献1)。さらに夜間の光曝露は生体リズムの中枢である視交叉上核に直接作用し,様々な臓器の概日リズムを変調させることが確認されています。
実験室下の強い光条件ではこのような生体反応が起こることが明らかになっていますが,実生活下での夜間の光曝露が健康にどのように影響するかについては,医学的エビデンスはほとんどありませんでした。筆者らは2010年から奈良県で1127名の男女を対象に,光環境が健康に及ぼす影響についての前向きコホート研究(平城京スタディ)を行っており,その横断解析結果から,夜間に光を多く浴びることが肥満,糖尿病,脂質異常症,高血圧,睡眠障害,うつ症状など多くの病態と関連することを報告してきました(文献2~5)。
光の色という観点では,2002年に網膜に錐体細胞や桿体細胞とは異なる光受容細胞(光感受性網膜神経節細胞)が発見されました(文献6)。この生体リズムと関連の深い光感受性網膜神経節細胞は,460
nm付近の短波長(いわゆるブルーライト)に強い感受性を有しているため,短波長が網膜への障害だけでなく,メラトニンの分泌抑制や生体リズムの変調に強く関連することが示唆されています。質問にあるLEDの照明について,使用条件にもよりますが,一般的に白熱灯や蛍光灯などよりもこの短波長成分を多く含むため,生体への影響は大きいと考えられます。今後,技術の進歩により,短波長成分の少ないLED照明が流通する可能性もありますが,現時点では使用に十分注意を払う必要があると思われます。

【文献】


1) Zeitzer JM, et al:J Physiol. 2000;526 Pt 3:695-702.
2) Obayashi K, et al:J Clin Endocrinol Metab. 2013;98(1):337-44.
3) Obayashi K, et al:Chronobiol Int. 2014;31(3):394-400.
4) Obayashi K, et al:Chronobiol Int. 2014;31(9):976-82.
5) Obayashi K, et al:J Affect Disord. 2013;151(1):331-6.
6) Hattar S, et al:Science. 2002;295(5557):1065-70.

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