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軽度食道カンジダ症に対する抗真菌薬の副作用と重症化リスクは?

No.4802 (2016年05月07日発行) P.63

西山直哉 (愛知医科大学病院感染症科/感染制御部)

山岸由佳 (愛知医科大学病院感染症科/感染制御部 准教授)

登録日: 2016-06-07

最終更新日: 2016-12-15

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【Q】

基礎疾患のない高齢者に,胃内視鏡で10個程度のカンジダ白斑を認めました。この程度の食道カンジダ症への抗真菌薬治療適応はありますか。ジフルカンR投与は副作用などの面で躊躇しています。食道カンジダ症から深在性真菌症へ移行するリスクはないのでしょうか。
(宮崎県 O)

【A】

わが国での食道カンジダ症の頻度は,上部消化管内視鏡検査を実施された症例の1%前後であり,比較的頻度の高い消化管感染症の1つとなっています(文献1)。
食道カンジダ症は,HIV感染症や,悪性腫瘍,糖尿病,血液疾患などの免疫能低下を引き起こす基礎疾患を有する患者での日和見感染として知られていますが,ステロイドのみならず,抗菌薬,H2-blockerやproton pump inhibitor(PPI)などの薬剤も誘因となります。一方,実臨床では,基礎疾患がなくリスクとなる薬剤内服もない健常成人での症例も認められています。
食道カンジダ症の治療適応は,症状,免疫状態,重症度を評価し,自覚症状を有する場合や重症化が予測される場合に治療適応と判断されます。自覚症状としては,咽頭や胸部の違和感や嚥下時痛,心窩部痛,嘔気,嘔吐などがありますが,まったく自覚症状を認めず内視鏡検査で偶然に発見される症例も少なくありません。
重症度の評価には,Kodsiら(文献2)の重症度分類(表1)が参考となります。通常,Grade Ⅰの多くは治療を要さず,Ⅱ~Ⅳは出血や狭窄などの合併症を考慮し,治療の是非を検討する必要があります(文献3)。
今回,ご質問頂いた例は,Grade Ⅰに該当すると考えられ,基礎疾患がなく症状がなければ経過観察可能です。ただし,食道カンジダ症の誘因を検討する必要があり,重症化リスクとなりうる基礎疾患・臨床背景がないか,確認することをお勧めします。Grade Ⅰに該当する軽症例では,自然軽快することもありますが,病態が進行し重症化すると,消化管内でカンジダが過剰増殖し所属リンパ節などを経由して血液中に侵入することでカンジダによる真菌血症を引き起こします。さらに全身に散布され増殖し,播種性カンジダ症となる可能性があります(文献4)。
内視鏡的重症度のみならず患者背景を十分に検討し,重症化するリスクがないか評価した上で,治療方針を決定することが推奨されます。

【文献】


1) Naito Y, et al:Gastroenterol Jpn. 1988;23(4):363-70.
2) Kodsi BE, et al:Gastroenterology. 1976;71(5):715-9.
3) 山岸由佳, 他:深在性真菌症のマネジメント. 河野 茂, 編. 医薬ジャーナル社, 2015, p241-7.
4) 高田 丈, 他:Prog Dig Endosc 消内視鏡の進歩. 1995;47:152-3.

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