株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

水痘予防接種の間隔

No.4763 (2015年08月08日発行) P.63

大橋正博 (豊川市民病院小児科部長)

吉川哲史 (藤田保健衛生大学小児科主任教授)

登録日: 2015-08-08

最終更新日: 2016-10-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

水痘予防接種の2回目接種は,初回接種から3カ月以上間隔を空け,標準的には6カ月から12カ月の間に接種するとされています。この「標準的には」というのは,どういう理由で付け加えられているのでしょうか。
また,わが国で水痘予防接種を2回施行する理由は,1回接種しても抗体が上昇しない例が15~20%あるため(primary vaccine failure:PVF)と理解しています。もしもそうであるとすれば,初回接種と2回目接種の接種間隔は短いほうがよいのではないかと考えますが,いかがでしょうか。
(埼玉県 I)

【A】

1回のワクチン接種で十分な抗体価上昇が得られない例では,どのようなことが起きているのでしょうか。ワクチン接種後抗体価陰性例でも,追加接種によりほとんどの例で著しい抗体価上昇(ブースター効果)を示します。また,水痘の感染防御には液性免疫とともに細胞性免疫も重要な役割を果たしていますが,接種後抗体価陰性例の中に細胞性免疫が誘導されている例がみられ,真のPVFとは異なるようです(文献1)。しかしながら,不十分な免疫誘導であることは明らかで,追加接種により確実な感染防御レベルの抗体価を誘導しておくことは大切です。
今後,わが国でも水痘の流行が減少すると水痘自然曝露の機会が減少し,米国のように1回目のワクチン接種で誘導された免疫の減衰に伴い接種後罹患が増加する可能性があります。このようなsecondary vaccine failure,ワクチン接種後抗体価減衰によるワクチン接種後罹患を防ぐためには,より長い接種間隔が必要となります。一方,現在のわが国の疫学データでは,水痘患者数は減少しているものの散発的な流行がみられており,2回目接種の役割は免疫減衰を防ぐためのブースター効果を期待するというより,短期間に十分な感染防御能を付与する点にあります。
筆者らのデータでは,ワクチン接種間隔がおおむね半年から1年で最大抗体価を示すことが示されています。一方で,疫学調査から接種後罹患は1年以内でも約10%にみられ,その多くが接種後半年を経過してからである点を考えると(文献2,3) ,初回接種から,6カ月から1年の間隔で接種するのが適切であると考えられます。
しかしながら,現実的には児の水痘曝露へのリスクを考慮し,たとえば託児所などに通所する予定があるなど曝露リスクが高くなるケースでは,6カ月を待たずに接種することがよいと考えられ,「標準的には6カ月から12カ月の間に」という表現になっています。

【文献】


1) 大橋正博, 他:日小児会誌. 2013;117(9):1416-23.
2) Ozaki T, et al:Vaccine. 2000;18(22):2375-80.
3) 高山直秀:小児臨. 1996;49(5):927-32.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top