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疾患名としての「症候群」の用法

No.4725 (2014年11月15日発行) P.59

風祭 元 (帝京大学名誉教授)

登録日: 2014-11-15

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

「○○症候群」という命名は,元来,原因不明ながらも共通の症候をまとめた概念であったはずであるが,最近は原因が明らかなものにも使われている。「○○症候群」と命名するとき,どのような基準があるのか。 (千葉県 K)

【A】

人類の長い歴史の中で,我々は不健康な状態を病気と呼び,その原因,症状,経過などの特徴によって,様々な「病名」を付けて呼んできた。病気の認識と命名の仕方は,その時代の社会状況や医学的知識によって異なる。おそらく最初は症状名がつけられ(「熱病」「頭痛」など),原因,病態生理や経過が同一と推定されるものが,単一疾患として認知されて,単一の病名が付けられたと考えられる。ご質問のように,いくつかの症状や症候のまとまりが観察されたときに,仮に「○○症候群」として記載され,研究が進むにつれて「○○病」という単一疾患として認知されることが多いが,現在でも「病気」と「症候群」の使いわけには明確な基準はないようである。
わが国の厚生労働省による死因統計の基準となっている国際疾病分類(International Classification of Diseases:ICD)には4桁のコード番号の付けられている病的状態の名称が1万2000以上あるが,これには,疾患,症候群,症状が混在している。わが国でも外国でも「症候群辞典」が多数出版されているが,採用されている「症候群」は雑多で,一定の定義はみられない。
1例を挙げてみると,現在「パーキンソン症候群」と呼ばれている状態は英国の医師James Parkinsonが1817年に筋強剛,振戦,寡動などを示す神経疾患を「paralysis agitans(振戦麻痺)」と名付けて報告した。そして1888年に,フランスの有名な神経学者Charcotは,この状態の重要性を認め,「パーキンソン病(maladie de parkinson)」と名付けた。しかし,この症状の組み合わせは多くの病因によって起こることがわかり,現在では「パーキンソン症候群」(パーキンソニズム)と呼ばれ,普通名詞としてparkinsonismとも書かれる。これは同一の状態が,単一疾患になったり症候群になったりした1例である。
なお,精神医学領域では,症候群がその時代の社会的病理現象を示す用語としても用いられることがある(燃え尽き症候群,ピーターパン症候群など)。これはもちろん医学の病名とは異なる。

【参考】

▼ 小川鼎三:医学用語の起り. 東京書籍, 1990.
▼ 風祭 元:こころの科学. 2002;105:13-8.

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