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母趾発赤患者の痛風・痛風の鑑別

No.4717 (2014年09月20日発行) P.65

猪狩勝則 (東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター准教授)

登録日: 2014-09-20

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

75歳,男性。53歳のときに痛風発作があり,アロプリノールを服薬継続中。その後,発作なし。58歳から高血圧のためアムロジピン5mg1錠,トリクロルメチアジド1mg1錠,リシノプリル20mg1錠服薬中。年1回の検診で2013年7月,尿酸値6.7mg/dL。2014年4月26日,右母趾発赤,腫脹疼痛あり。当日の尿酸値6.1mg/dL,白血球6500/μL。このとき,発赤,腫脹は約10日間で消失している。生活習慣は,1日にタバコ10本,日本酒3合。前日通常の散歩を30分。そのうち100mくらいは走っている。
本例は痛風発作と診断すべきか。偽痛風には母趾発赤は稀のようであるが,その可能性も考えるべきか。 (静岡県 M)

【A】

本例は痛風発作の既往のある男性であり,好発部位である母趾の急性単関節炎が約10日で軽快という典型的な経過をたどっていることから,やはり最も疑うべきは痛風発作である。高尿酸血症の治療中であるが,数カ月前の検診では尿酸値が尿酸の体液中での溶解限界と考えられる6.4mg/dLを上回っており,関節内に尿酸塩が沈着した可能性は十分に考えられる。発作時の尿酸値は6.1mg/dLであるが,発作中の血清尿酸値は必ずしも高値を示さず,むしろ低値を示すことが少なくないため,発作時の血清尿酸値が低いからといって油断はできない。痛風発作消退後に血清尿酸値6.0mg/dLを目標に治療を行うとよいと考えられる。
偽痛風の可能性もないとは言えないが,偽痛風は一般に大関節に好発する。両者の鑑別に最も有用とされるのは関節液中の結晶検査であるため,診断に疑問があれば次回の発作時に関節穿刺を試みて頂きたい。
またトリクロルメチアジドを服用中とあるが,サイアザイド系利尿薬は高尿酸血症を惹起することがあるため,高血圧合併高尿酸血症患者には尿酸代謝への影響が少ないカリウム保持性利尿薬の使用を勧めたい。
喫煙と高尿酸血症との関連は明らかではないが,飲酒は用量依存的に痛風発症リスクを上昇させることが知られている。血清尿酸値への影響を最低限に保つ目安量は,日本酒では1日1合程度とされており(文献1),3合は明らかに過量であるので生活習慣指導も行うことが望ましい。有酸素運動では血清尿酸値に影響せず,高尿酸血症を含むメタボリックシンドロームの種々の病態を改善させるが,無酸素運動ではプリンヌクレオチド分解が亢進することで尿酸産生が増加し,血清尿酸値が上昇する。その観点から考えると散歩は望ましい運動であるが,100mの短距離走は無酸素運動になっている可能性があるので注意が必要である。

【文献】


1) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会 編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン. 第2版. メディカルレビュー社, 2010. P111.

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