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小児の睡眠時無呼吸症候群に対する手術適応 【24カ月以上の小児で呼吸停止や酸素飽和度の低下がありAHI≧5回/時の中等症,もしくは≧10回/時の重症OSAと診断されれば,積極的適応となる】

No.4805 (2016年05月28日発行) P.61

鈴木雅明 (帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉科 教授<br /><br />)

登録日: 2016-05-28

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

小児では,口蓋扁桃肥大,アデノイド増殖症などにより,いびきや睡眠時無呼吸を生ずることがあります。成長につれて症状が軽減する場合もありますが,口蓋扁桃摘出術やアデノイド切除術について年齢,無呼吸の状態に応じてどのような基準で行うとよいか,この分野を専門とされる帝京大学ちば総合医療センター・鈴木雅明先生のご教示をお願いします。
【質問者】
吉田尚弘:自治医科大学附属さいたま医療センター 耳鼻咽喉科教授

【A】

小児閉塞性睡眠時無呼吸症(obstructive sleep apnea:OSA)は重症例における心血管系への影響のみならず,高次脳機能,また顎顔面骨格成長への影響が軽症例においても明らかとなってきています。そのため,2歳(24カ月)以上の小児は積極的に手術を行うという考え方が主流となっています。手術適応において無呼吸の重症度は参考とはなるものの,無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)値にてクリアカットに決まるわけではありません。顎顔面の成長を待てばアデノイド・口蓋扁桃の相対的大きさは小さくはなります。しかし,通常はOSAの治癒(AHI<1回/時)までには至りません。一方,24カ月未満の乳幼児は,成長を待つほうがよいケースが多いです。
24カ月以上の小児では,夜間モニターにて呼吸停止や酸素飽和度の低下がありAHI≧5回/時の中等症,もしくは≧10回/時の重症OSAと診断されれば,積極的にアデノイド切除・口蓋扁桃摘出術の適応としてよいと判断します。特に,小下顎,下顎後退,アデノイド様顔貌などの顎顔面形態の劣成長,または身長・体重の劣成長がある場合は,AHI<5回/時の軽症例であっても成長を待たず治療をすることが好ましいと思います。
また,7歳以上の学童においては日中傾眠,注意欠如多動・集中力低下,感情の不安定,記憶力・学習能力低下などの高次脳機能への影響が臨床症状として問題となり,軽症例であっても積極的に治療を行うようになってきています。さらに,滲出性中耳炎,慢性副鼻腔炎,また慢性扁桃炎の合併があれば,より手術適応となります。ただし,手術に先立ち抗ロイコトリエン薬,ステロイド点鼻薬などの保存的加療を先行させてもよいと思います。
小児OSAには季節変動が報告されており,冬から春に悪化し,夏に軽快する傾向が認められています。冬から春の睡眠検査で軽度から中等度を示す小児OSAに対しては保存的加療を先行させ,症状が軽減する初夏あたりの再検査とするのもよいと考えます。
一方,乳児・未熟児における無呼吸は中枢性の頻度が高く,睡眠障害国際分類第3版(The International Classification of Sleep Disorders. 3rd Edition:ICSD-3)では中枢性睡眠時無呼吸症候群(cen-tral sleep apnea syndrome:CSAS)に分類されます。1歳未満の乳児のみならず,24カ月未満の幼児においても生理的な中枢性無呼吸の頻度は高いとされており,特にレム睡眠中にCSAが多く認められます。これらのCSAは基礎疾患がある場合を除き,成長とともに消失してくる傾向が顕著であるため,24カ月以降まで成長を待つべきです。
閉塞性が主である(pure-OSA)と診断された場合においては,24カ月未満児の全身麻酔下アデノイド切除・口蓋扁桃摘出術,および周術期管理のリスクは高くなるため,手術適応は慎重に判断したいものです。可能であれば24カ月以降,体重15kg以上になるまで保存的加療を先行させ,成長を待ってもよいと思います。ただし,この年齢の段階では顎顔面の成長によるOSA重症度の改善は期待できません。重症例にて早期に手術すべきと判断された場合,まずはアデノイド切除術のみを行うという選択肢も考慮すべきと思います。

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