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HIVスクリーニング検査が陽性となった場合の対応と専門医療機関への紹介のタイミング【迷ったら電話相談を】

No.4804 (2016年05月21日発行) P.57

宇野健司 (奈良県立医科大学附属病院感染症センター講師)

登録日: 2016-05-21

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

一般医療機関で行われたHIVスクリーニング検査が陽性であったとき,さらにどこまで精査してから専門医療機関に相談・紹介するのが適切でしょうか。また,紹介までの間の対応で何か特別に注意すべき点はあるでしょうか。奈良県立医科大学・宇野健司先生にお聞きします。
【質問者】
塚田訓久:国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター医療情報室室長

【A】

HIVスクリーニング検査,いわゆるHIV抗原抗体検査は現在,多くの検査機関で第4世代抗原抗体検査が採用されていることと思います。
HIV感染の確定診断にはスクリーニング検査のHIV抗原抗体検査と,確認検査としてのウェスタンブロット(Western blot analysis:WB)法および核酸増幅法〔ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)法〕の3つの検査を行い,その結果でHIVに感染しているかどうかを最終診断します。
HIV抗原抗体検査は非常に高い感度と特異度を持っています。しかし,有病率が低いわが国では偽陽性が非常に多く,当院で第4世代抗原抗体検査が導入された際に行った検討の中で,外科手術前に行われた抗体検査でHIV陽性になった患者のうち,確認検査を行ったところ,わずか3%が真のHIV感染症であったという結果でした。つまり,HIV抗原抗体検査陽性のうち,97%が「ニセモノ(偽陽性)」であったということです。
このため専門医療機関に紹介する際には,できればHIV-1WB法とHIV-1PCR法の追加検査を行って頂き,HIV感染症を診断してから紹介して頂くことが,患者本人の心理的負担を考えると望ましいと思います。それまでは,患者にはHIV感染症と診断したとは説明せず,「偽陽性が多いので確認検査を行って確定診断を行う」と説明して頂ければと存じます。確認検査の結果は1週間程度で返却されると思います。
ただし,どの検査をすればよいか,検査結果をどう評価すべきなのかなど,迷われた場合,あるいは症状があり,専門医への紹介を早めたい場合は,すべての確認検査を行う前に各都道府県のHIV中核拠点病院,各地区のブロック拠点病院の専門医に相談して頂いてよいと考えます。そのため,迷った場合には各施設に連絡して頂ければと存じます。
なお,確定診断後,HIV感染症は5類全数把握の疾患ですので,届け出が必要となります。また,ご連絡・ご紹介頂く際には,誰にHIV感染症のことを告知したのか(本人だけ,あるいは家族にも説明済み,など)を情報として入れて頂くと幸甚です。

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