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第一・第二鰓弓症候群の耳介形成

No.4759 (2015年07月11日発行) P.60

四ツ柳高敏 (札幌医科大学附属病院形成外科教授)

登録日: 2015-07-11

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

第一・第二鰓弓症候群の片側性の患者さんでは,軟部組織,硬組織ともに低形成な状態で通常通りの肋軟骨移植を行い,ついで耳介を挙上しても,反対側に比べて十分な聳立を得ることは困難です。上下顎骨を骨切りしたり延長し軟部組織を移植した後でも,移植する軟骨フレームの固定性が得にくいのではと推察します。健側に比べて移植予定部位の陥凹が重度な場合は,どのように耳介を挙上されているのか,再建の時期を含め,札幌医科大学・四ツ柳高敏先生のご教示をお願いします。
【質問者】
宮田昌幸:新潟大学医歯学総合病院形成外科講師

【A】

頬部の著明な低形成の患者に対して,良好な対称性を得るための有効な術式は,これまで論文などにおいても報告例は稀です。そして私にとってもいまだ解決されていない問題点の1つであることを,あらかじめ申し上げておかなければなりません。
顎関節周囲硬組織の低形成のため,軟部組織の上で耳介を挙上しようとしても,耳介が軟部組織内に沈んでしまい,どれだけ耳介挙上時に軟骨を挿入しても,耳介が十分挙上されないことが問題となります。私の経験からは,耳介を形成する位置の設定が一番重要であると思います。非対称の顔貌に惑わされ,どうしても前方,低位に設定してしまうミスが多いと思われます。
そこで,通常行うより若干後方位置に設定すると,頭髪のかかる範囲が広くなってしまうという問題はあるものの,乳様突起上に一部重ねて耳介を形成することができるようになります。耳介の土台に硬組織が存在することになり,挙上しやすくなります。耳介挙上時に大きめに軟骨移植を行うことで,挙上が得られやすくなります。
このような患者さんでは,low hairlineやもみあげの低形成を伴うことが多いので,もみあげの形成を併せて考慮することにより,より自然な印象が生じます。また,耳介の高さは,あくまで目と対側の耳介を目安とし,耳介の頭側の位置がそろうよう意識すると,対称性が得られやすくなります。
手術時期としては,他の小耳症と同様に,小学校5年生以降としていますが,中学生以降で成長により下顎の非対称が進行し,またそれに伴い,耳介皮膚が下方に牽引されることから,形成された耳介は下方に牽引されてしまう傾向があることも念頭に置く必要があります。学校の問題もあるので難しい点もありますが,理想的にはより遅い時期に計画することが望ましいように思います。

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