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胎児治療の現状

No.4757 (2015年06月27日発行) P.58

遠藤誠之 (大阪大学医学部産婦人科講師)

登録日: 2015-06-27

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

出生前診断の目的には,(1)胎児治療を行うため,(2)出生後の治療に向けて分娩時期・分娩方法・出生後の蘇生の準備を行うため,(3)妊娠を継続するか否かを決定するため,の3つがあります。
しかし,わが国においては胎児疾患を理由とした中絶が認められていないにもかかわらず,(3)の目的のためだけに行われているかのような話題を多く耳にし,残念です。本来の出生前診断の目的である胎児治療は,わが国において,どこまで可能になったのか,大阪大学・遠藤誠之先生のご教示をお願いします。
【質問者】
金川武司:大阪府立母子保健総合医療センター 産科副部長

【A】

胎児治療とは,母体を介して子宮内の疾患を有する胎児に対して行う治療です。対象は,胎児期に病状が進行する致死性の疾患,あるいは致死性ではないが,将来にわたってきわめて重大な障害を残す疾患で,出生後に有効な治療方法がない疾患です。当然のことながら,胎児期に治療するためには,対象とする疾患の自然史が熟知され,実施する胎児治療が有効であることが証明されており,また治療が母体あるいは胎児にとって安全でなければなりません。
胎児治療には,経母体的に薬物を投与する内科的治療と,超音波ガイド下,内視鏡下,さらに母体皮膚切開・子宮切開を伴う直視下で胎児・胎盤に手術操作を行う外科的治療の大きくわけて2つがあります。表1に主な胎児外科治療についてまとめています。
現在,日本で行われている胎児治療には,内科的治療として,(1)胎児頻脈性不整脈に対する経母体的薬物療法,(2)先天性肺気道奇形(congenital pulmonary airway malformation:CPAM)に対する経母体的ステロイド療法,外科的治療として,(1)双胎間輸血症候群(twin-to-twin transfusion syndrome:TTTS)に対するレーザー手術,(2)胎児発育不全を伴う一絨毛膜双胎に対するレーザー手術,(3)胎児胸水に対する胸腔─羊水腔シャント術,(4)下部尿路閉鎖(lower urinary tract obstruction:LUTO)に対する膀胱─羊水腔シャント術,(5)胎児貧血に対する子宮内輸血,(6)無心体双胎〔twin reversed-arterial perfusion(TR AP)sequence〕に対するラジオ波を用いた無心体体内血管血流遮断術,などがあります。
また2013年から先天性横隔膜ヘルニア(congen-ital diaphragmatic hernia:CDH)に対する胎児鏡下気管閉塞術(fetal endotracheal occlusion:FETO)の安全性臨床試験も開始されました。
欧米では,先天性心疾患(重症大動脈弁狭窄)に対する超音波ガイド下大動脈弁拡張術,脊髄髄膜瘤に対する直視下胎児脊髄髄膜瘤修復術が,限られた施設において行われています。それらの胎児治療は,まだ日本では行われていません。現在,これら疾患に対する胎児治療の実現に向けて準備を整えているところです。さらに詳しい情報は,日本胎児治療グループのホームページ(http://fetusjapan.jp/)をご参照下さい。

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