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瞼裂狭小症に対する手術方法

No.4757 (2015年06月27日発行) P.57

宮田昌幸 (新潟大学大学院医歯学総合研究科 形成・再建外科講師)

登録日: 2015-06-27

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

瞼裂狭小症に対する手術は,主に眼瞼下垂に対する治療と内眼角形成・瞼裂幅拡大など眼瞼形態の再建に大別されると思います。しかし,特に後者の手術についてはどのような手術方法をとると,優れた結果を得られるのか,判断に苦慮しています。本疾患に対する治療,長期の経過観察を経験されている新潟大学・宮田昌幸先生に,内眼角・瞼裂幅を中心とした眼瞼形態再建の要点について,ご教示をお願いします。
【質問者】
宇田川晃一:千葉県こども病院形成外科部長

【A】

瞼裂狭小症は,上眼瞼下垂,逆内眼角贅皮,内眼角間の拡大,水平方向の瞼裂狭小といういわゆる4徴を示すため,瞼裂の垂直と水平の両方向に拡大が必要となります。術後に互いに引き合う力が働くため,ご指摘の通り優れた結果を得るのがきわめて難しい疾患です。
このため,二期にわけて行うほうが狭小の拡大効果が高いとする文献が多くみられます。すなわち内眼角形成をまず行い,二期的に眼瞼下垂を治す方法です。しかし,近年では同時施行しても瞼裂狭小の改善が得られるとの報告が増えています。
私自身は,まず逆内眼角贅皮,内眼角間離開に対してはMustarde法とsuture anchorを用いた内眼角形成術を行い,同時に眼瞼下垂には筋膜移植による吊り上げ術を施行しています。
眼瞼下垂に関しては,前医で挙筋短縮された症例の再発例を経験したこと,弱視が進行する可能性のある年齢では,より確実な方法が望ましいこと,MRI画像で挙筋の欠損ないし低形成が報告されていることなどから,吊り上げ術を第一選択としています。
内眼角形成については,確実性からMustardeのjumping man incisionから内眼角を展開し,suture anchorを用いて内眼角靱帯を短縮・固定しています。瘢痕が複雑になるため,少し小さめのデザインとし,切開線を一部,贅皮部の襞に一致させています。
内眼角の切開法に関しては,one-armed jumping man incisionやhalf-Z形成術,5-flap変法をはじめ多くの方法がありますが,手術瘢痕の優劣を結論づけるのは困難です。むしろ,内眼角靱帯を確実に短縮することがより重要で,この観点からsuture anchorを用いていますが,後戻りの少ない良好な結果が得られます。しかし,ナイロン糸による骨膜への固定で十分とする報告もあります。靱帯の固定法,切開線のデザインは狭小症の重症度から選択すべきと考えています。

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