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窮屈さのない医師不足対策を [お茶の水だより]

No.4807 (2016年06月11日発行) P.12

登録日: 2016-06-11

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▼職業選択の自由が前提とされていた従来の医師偏在対策の方向性が転換されようとしている。厚生労働省が経済財政諮問会議への提出資料等で、自由開業・自由標榜の条件つき制限などの「規制的手法」を含む偏在対策を検討する方針を明確に示し始めたのだ。
▼日本医師会の横倉義武会長は「『規制的手法』を巡っては医療界にさまざまな“アレルギー”がある」と語っている。一方、日本病院会が会員病院を対象に実施した調査では、7割以上の病院長・理事長が「医師の計画配置」「地域枠入学の活用」などの偏在対策に賛成しており、「医師不足に苦しみ抜いている地方の中小病院は規制的手法への期待が大きい」(日病常任理事)という。
▼もし規制的手法が一部導入されることになれば異論は巻き起こるだろうが、医療界全体が“アナフィラキシーショック”に陥るほどの事態には至らないかもしれない。しかし、職業選択の自由を縛る対策ばかりでは、現場の医師の理解は得られにくいだろう。
▼厚労省の「医師需給分科会」では、「医師不足」の要因として、診療以外の医師の事務仕事の多さが指摘されている。委員からは、診療事務作業を補助する医療クラークを活用しやすい環境整備や、医療クラークの国家資格化と計画的養成も提案されている。
▼規制的手法を「硬」の対策とすれば、医師の働き方や業務範囲の見直しは「軟」の対策と言える。「医師不足」への対策が国家的な課題となっている今、医師が窮屈さを感じることなく診療に打ち込める医療現場の実現を目指し、硬軟双方の視点から対策を検討していくべきだろう。


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