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“ゆう活”と健康リスク [お茶の水だより]

No.4761 (2015年07月25日発行) P.9

登録日: 2015-07-25

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▼7月に入ってから、霞ケ関方面から来る電車の混雑時間帯が、朝夕とも不思議に早まった。その謎は、夕刻の厚生労働省内で解けた。大臣政務官が廊下を歩きながら「早く帰りましょう」と言って回っているのを見て合点した。そうだ、“ゆう活”だ─。
▼“ゆう活”とは、政府が国家公務員を中心に推奨する朝方勤務キャンペーンの通称だ。7~8月の2カ月間、出勤を最大2時間早め、退勤後を家族サービスや趣味に活かすよう呼びかけている。日本版のサマータイムとも言えるかもしれない。もっとも、実際に定時に退勤できているのは、安保法制の審議で国会が延長されている影響もあるのか、全体の60%程度だという。「勤務時間が長くなっただけ」という面が強いのは否めない。
▼健康面でも気になる点がある。『保健医療科学』(64巻2号)に掲載された土井由利子氏(国立保健医療科学院)らの論文によると、サマータイム開始後と終了後、概日リズムが整うまでには数日~数週間を要するという。睡眠時間も開始後と終了後では30分以上の増減がある。サマータイムにはリスクグループも存在する。睡眠が短いまたは不足している者、夜型人間、高齢者、循環器疾患の既往歴者などは、開始後に急性心筋梗塞の発症が増加するという。
▼政府が来年以降も“ゆう活”を続けるかどうかは分からないが、仮に“ゆう活”が全国展開されることになったらどうか。その場合は、南北に長い日本の地域差を考える必要があるだろう。前出の論文によれば、季節性変化が少ない低緯度の沖縄では、サマータイムを導入しても、経済効果や省エネ効果より「むしろ睡眠障害や心血管疾患が増加する懸念がある」という。いずれにしても、リスクグループと不向きな地域の存在は、しっかり認識すべきだろう。


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