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再教育研修は行政処分のカギ [お茶の水だより]

No.4709 (2014年07月26日発行) P.7

登録日: 2014-07-26

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▼医師法の一部改正により2007年から実施されている、行政処分を受けた医師に対する再教育研修。その現状と今後のあり方について、野村英樹杏林大教授ら厚労省研究班が報告書を取りまとめた。
▼再教育研修は団体、課題、個別の3種類あり、そのうち団体研修は、各地方厚生局により年2回実施されている。内容は法令遵守や職業倫理、医療事故の予防等に関する講義とワークショップで、参加者は毎回30~50名。報告書によると、当初は反抗的な態度を示したり参加意欲のない者がいるなど混乱も見られたが、研修開始から7年が過ぎ、受講者側にも制度として受け入れられてきているという。
▼課題研修では、処分の原因となった事由に関する研究論文を作成・提出する。1年未満の医業停止処分者に義務づけられ、厚労省が内容の確認を行っているが、その評価や効果に関する情報は公開されていない。一方、1年以上の医業停止で義務づけられる個別研修では、被処分者ごとに「助言指導者」を選任。多くの場合、被処分者がかつて所属していた大学医局の教授や所属病院の院長に依頼され、医業停止2年未満で80時間以上、2年以上で120時間以上、個々の被処分者に応じて、病棟回診、手術見学、症例検討会、シミュレータを用いたトレーニング等の研修が行われる。
▼行政処分の基本は専門家としての医師の資格保証システムであり、単に免許取消しや医業停止ではなく、医療安全を図るためのものであるべきだ。その意味で、再教育研修は重要なカギとなるが、現状では個別研修の助言指導者の質を担保する仕組みはなく、実際どのような研修が行われているのか、実態も明らかではない。研究班は、助言指導者の養成や医学教育の専門家による研修の検証の必要性を訴えているが、同時に、学会や日本医師会など専門家集団による研修プログラムの標準化や質の担保、復帰に向けた評価が必要ではないか。特に医療事故について、医学の専門家によって行政処分の実質的判断が行われる制度への切り替えを目指すのであれば、医療界として、医師再生のための有意義な教育システムを保証していく必要がある。
▼行政処分が先にあり、極めて例外的に刑事処分があるというシステムが望まれる。医療界が総力を挙げ、プロフェッショナリズムに則って処分の実質的判断や再教育を行うような形でシステムが構築されることに期待したい。

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