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厚労省、政府調査会推計は「参考値」 - 病床削減報道も「中身きちんと見てほしい」 [地域医療構想]

No.4759 (2015年07月11日発行) P.7

登録日: 2015-07-11

最終更新日: 2016-11-24

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(概要) 地域医療構想策定作業が各地で進んでいる。政府専門調査会は25年には41道府県で減床が必要との推計病床数を公表したが、厚労省はあくまで「参考値」との位置づけだ。

各都道府県で地域医療構想の策定作業が本格化する中、政府の専門調査会が6月15日に公表した2025年の医療需要の推計が混乱を招いている。日本医師会が2日に開催した都道県医師会向けの地域医療構想策定研修会でも、話題の1つとなった。
政府推計(表1)による25年の必要病床数は、神奈川、大阪、東京などの6都府県では増床となった一方、41の道府県では減床が必要、という結果に。
これを受け、研修会で講演した厚労省の北波孝地域医療計画課長は、「中身をきちんと見る必要がある」と指摘した。政府推計は地域医療構想ガイドラインで示した計算方法を一定の仮定に基づき、機械的に全国の人口推計などを代入して計算した「参考値」とし、地域医療構想の理念を改めて強調。「2025年に向け、都道府県や医療関係者が丁寧に調整を行う自主的な取り組みが基本」として理解を求めた。
医療需要には人口推移が大きく影響
では、各地の地域医療構想策定の場では、どのような議論が行われているのか。例えば東京都は、6月29日に第3回策定部会を開催。構想の策定単位となる「構想区域」の設定に向けた議論に入った。
その中で、たたき台として提出されたのは、先の政府推計だ。東京都は2013年の病床数が108.3万床で、25年の推計は4.2万床増の112.5万床。東京都の場合は他圏域からの流出入が激しい(表2)ため、5疾病の医療需要推計などを踏まえつつ、これをベースに病院所在地に基づく25年の医療供給数(113.9万床)との間で調整を行うことになる。
厚労省はあくまで参考値とのスタンスだが、医療需要に最も大きな影響を与えるのは人口の推移。1日に総務省が発表した人口推計では、昨年から全国で約27万人減少しており、日本は人口減少局面に入っている。強制的な病床削減とはならないまでも、多くの都道府県で減床に向けた調整が迫られることになりそうだ。

【記者の眼】医療関係者が懸念するのは都道府県知事による病床削減。知事には病床を強制削減する権限はないが、人口推移を踏まえると全国的な減床基調は避けられない。民間で調整は難航が予想されることから、自治体病院などへの圧力が高まる恐れがある。(T)

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