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急性声門下喉頭炎(クループ)[私の治療]

No.5272 (2025年05月10日発行) P.43

室野重之 (福島県立医科大学耳鼻咽喉科学講座教授)

登録日: 2025-05-08

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  • 急性声門下喉頭炎(クループ)は声門下部を中心に急性炎症が起こるもので,ジフテリア菌によるものを真性クループ,それ以外によるものを仮性クループと呼ぶが,ワクチンの普及により真性クループはほとんどみられない。そのため,最近ではクループと言えば仮性クループを指す。原因は主にウイルス感染である。パラインフルエンザウイルスによるものが多いが,アデノウイルスやインフルエンザウイルスも原因となる。新型コロナウイルスによる報告もある。6カ月〜3歳,特に1〜2歳に好発する。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    1〜4日間の感冒様症状が先行し,発熱を伴うことが多い。犬吠様咳嗽やオットセイ様咳嗽,吸気性喘鳴などを認める。気道狭窄が強まれば,呼吸困難を生じる。幼小児の呼吸困難の症状として,多呼吸,鼻翼呼吸,陥没呼吸にも注意する。臨床症状と経過から診断をつけやすい。流涎はみられない。

    古典的なWestleyのクループスコアは吸気性喘鳴,陥没呼吸,呼吸音,チアノーゼ,意識レベルの各スコアの合計により,また「Diagnosis and Management of Croup. Clinical Practice Guideline」では意識レベル,喘鳴,呼吸補助筋,心拍数,会話・食事,その他から重症度を分類している1)。

    【検査所見】

    頸部X線正面像で,気管透亮像の狭小化(声門下腔の先細り)がみられ,steeple signやpencil signと呼ばれる。側面像では,喉頭蓋の腫大や咽頭後壁の腫脹は観察されない。

    喉頭内視鏡検査では,両側の声門下に半楕円形もしくはソーセージ様の腫脹が観察される。しかし,幼小児では刺激を伴う検査はかえって患児を興奮させ,症状を悪化させるため,無理に所見をとることはない。ただし,遷延する場合には考慮しなければならない。

    血中酸素飽和度の低下は軽微なことが多く,血液検査でも特徴的な所見はない。

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