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神経因性膀胱[私の治療]

No.5243 (2024年10月19日発行) P.46

本田正史 (鳥取大学医学部器官制御外科学講座腎泌尿器学分野准教授)

武中 篤 (鳥取大学医学部器官制御外科学講座腎泌尿器学分野教授)

登録日: 2024-10-18

最終更新日: 2024-10-15

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  • 神経因性膀胱とは,下部尿路(膀胱・尿道)の機能障害のうち,種々の神経疾患に起因するものの総称である。日常よくみられる原因疾患・病態として,脳血管障害,パーキンソン病,多系統萎縮症,多発性硬化症,アルツハイマー病,脊髄損傷,骨盤内臓器摘出術後などがある。

    ▶診断のポイント

    神経疾患発症後に,尿勢低下,腹圧排尿,排尿遅延などの排尿(尿排出)症状,頻尿,尿意切迫感などの蓄尿症状,残尿感などの排尿後症状,尿意低下・消失が出現した場合に神経因性膀胱を疑う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    神経因性膀胱の治療目標は,尿路合併症(腎機能低下,腎盂腎炎などの症候性尿路感染,上下部尿路結石など)の防止,尿禁制の獲得,QOLの改善である。これらの目標を達成するために重要なことは,膀胱の低圧環境を維持する排尿管理をめざすことである。

    神経因性膀胱には,排尿(尿排出)機能障害と蓄尿機能障害があり,この両者が併存する場合も少なくない。これらの機能障害から排尿症状,蓄尿症状が現れるが,排尿機能障害,蓄尿機能障害のそれぞれが排尿症状,蓄尿症状いずれも引き起こすことがあることに留意する。例として,排尿機能障害による残尿増加がある場合,症状は蓄尿症状の頻尿であることもある。

    まず,自排尿が可能なのか,清潔間欠導尿(CIC)が必要かを判断する。自排尿症例には薬物療法を併用することで自排尿が可能な場合もある。自排尿を選択する場合,腎機能低下・症候性尿路感染のリスク因子や100mL 以上の残尿がないことが条件となる。リスク因子は,膀胱容量低下,高圧かつ/または持続する排尿筋過活動,排尿筋括約筋協調不全,膀胱コンプライアンス低値(<10~20mL/cmH2O),排尿筋漏出時圧高値(>40cmH2O),膀胱尿管逆流,水腎症である1)。判断に迷う場合は,躊躇なく(透視下)尿流動態検査を行い,詳細な病態を把握する。

    自排尿またはCICを決定した後,残る機能障害(主に蓄尿機能障害)に対する薬物療法を検討する。以下の「治療の実際」では,自排尿またはCIC決定以降の薬物療法について記載する。神経因性膀胱に適応があるのはα1遮断薬のエブランチル(ウラピジル)と,体重25kg超の小児に適応がある抗コリン薬のトビエース(フェソテロジンフマル酸塩)である。β3受容体作動薬であるベオーバ(ビベグロン),ベタニス(ミラベグロン),抗コリン薬であるベシケア(コハク酸ソリフェナシン),ウリトス(イミダフェナシン),ステーブラ(イミダフェナシン),デトルシトール(トルテロジン酒石酸塩)は過活動膀胱のみに保険適用があり,α1遮断薬であるユリーフ(シロドシン),ハルナール(タムスロシン塩酸塩),フリバス(ナフトピジル)は前立腺肥大症のみに保険適用があることに留意する。

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