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【書評】『病院の将来とかかりつけ医機能』高齢多死社会を迎えるわが国にとって示唆に富む一冊

No.5219 (2024年05月04日発行) P.68

松本吉郎 (日本医師会長)

登録日: 2024-05-05

最終更新日: 2024-04-26

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わが国では、2020年に約600万人であった85歳以上の高齢者が2035年には1000万人を超え、その増加は2040年まで続くと言われている。そのため、高齢者の方々に住み慣れた地域で、いかに健康で暮らして頂けるかが喫緊の課題となっている。

こうした状況の中で発刊された本書には、2040年をターゲットとして、「病院の将来」「かかりつけ医」という2つのトピックスを中心に、高齢・多死社会を迎えるわが国の医療、社会保障に関する短期および中長期的な展望が示されており、大変参考になる。

その内容は全6章で構成。第1章「病院の将来」では、今後病院の中で中心的な役割を果たすのは地域密着型の中小病院であるとし、他の医療施設や介護・福祉施設、行政機関等との連携を強化することが不可欠になると指摘。また、第2章「かかりつけ医機能の強化」では、イギリス型のようなかかりつけ医の登録制や人頭払いを日本に導入することがありえない理由をわかりやすく説明している他、国民の医療満足度は医療機関が患者を受け入れなかったとの主張・報道があったにもかかわらず、コロナ禍前と同水準か、多少増加していること等、興味深い内容も紹介されている。

著者である二木立氏にはご多忙の中で、第3章でも触れて頂いている日本医師会が行った欧州医療(イギリス・ドイツ・フランス)の現地調査にもご参加頂いたが、本書の執筆にあたっては、「骨太の方針」や「全世代型社会保障構築会議報告書」など、2022・2023年の医療・社会保障関連の膨大な文書を読み解かれたとお聞きしており、そのご努力には頭が下がる思いがしている。

その努力の結晶とも言える本書には、先程触れた事項の他にも、今後の社会保障政策を考える上で示唆に富む内容が多数記されており、行政や医師会関係者ばかりではなく、日頃地域医療に従事する医師の皆さんにもぜひ、ご一読をお薦めしたい一冊と言える。

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