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【識者の眼】「愛西市ワクチン事故に対する医療事故調査制度の運用に関する見解」小田原良治

No.5217 (2024年04月20日発行) P.65

小田原良治 (日本医療法人協会常務理事・医療安全部会長、医療法人尚愛会理事長)

登録日: 2024-03-28

最終更新日: 2024-03-28

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日本医療法人協会は2024年3月6日、「愛西市ワクチン事故に対する医療事故調査制度の運用に関する見解」と題する文書を医療事故調査・支援センターを運営する日本医療安全調査機構宛に送付し、機構内にその内容を周知するとともに、愛西市に対し適切な助言・指導をするよう求めた。

日本医療法人協会がまとめた見解とは、(1)愛西市医療事故調査委員会が、「アドレナリンが迅速に投与されなかったことは標準的な診療とは言えない」とする医学的評価も含めた医療事故調査報告書の内容を公表し、記者会見を行ったことは、医療事故調査制度が想定していなかった不適切な制度運用であったこと、(2)医療事故調査制度の趣旨は、「非懲罰性」や「秘匿性」を強調した「学習を目的とした報告システム」であること、(3)医療事故調査制度では、単なる「匿名化」以上に厳しい「非識別化」が要求されているものであること、(4)医療事故調査制度は、「説明責任を目的としたシステム」ではなく、再発防止を行うことがその趣旨であり、「既に起きた事案の責任を追及するための制度」ではないこと、(5)その後、ご遺族から損害賠償の提訴がなされたのみでなく、「業務上過失致死罪」を理由に、接種に関わった医師や看護師を刑事告訴する意思を固めたとの報道がなされたことは、結局、医療事故調査制度の制度趣旨にまったく相反する結果となったこと。その原因は、「医療事故調査結果の公表」「医学的評価(標準的な診療とは言えない)の公表」という取扱いにあったこと─等である。

医療事故調査制度は、「医療事故調査制度の施行に係る検討会」で慎重な議論がなされ、医療安全のための報告書が当事者の責任追及に使われることがないように、2015年3月20日に「医療事故調査制度の施行に係る検討」として取りまとめられたものである。

このような歴史的経緯を無視して、愛西市医療事故調査委員会の委員長が医療事故調査報告書の内容を公表し、記者会見を行うということは、医療事故調査制度にとって想定外の行為である。日本医療安全調査機構は、今後の制度運用を改善し、愛西市および愛西市医療事故調査委員会の委員長に適切な指導を行うべきである。

小田原良治(日本医療法人協会常務理事・医療安全部会長、医療法人尚愛会理事長)[再発防止][責任追及]

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