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【識者の眼】「医療事故調査制度の『医療起因性』の考え方」小田原良治

No.5198 (2023年12月09日発行) P.60

小田原良治 (日本医療法人協会常務理事・医療安全部会長、医療法人尚愛会理事長)

登録日: 2023-11-29

最終更新日: 2023-11-29

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医療事故調査制度にいう、センター報告をすべき医療事故とは、『提供した医療に起因する死亡』であり、かつ『予期しなかった死亡』である。この『予期しなかった死亡』要件については、医療法施行規則第1条の10の2第1項第1〜3号で要件が明示されている。

一方、『提供した医療に起因する死亡』要件については、厚生労働省医政局長通知(医政発0508第1号)で「『医療に起因する(疑いを含む)死亡又は死産』の考え方」が示されているが、要件の該当性を判断しなければならないのは管理者とされている。この『提供した医療に起因する死亡』要件をどう判断したらいいかについて考えてみたい。

大雑把に全体像を把握すると、『医療』とは、診察・検査・治療である。そうすると診察・検査・治療に関係しないものは『医療起因性』はないと考えられるであろう。実際、『提供した医療に起因する死亡』に該当しないものとしては、①単なる管理(火災等、地震、落雷、天災その他の施設管理に関係するもの)、②併発症(提供した医療に関連のない、偶発的に生じた疾患)、③医療以外の原因(原病の進行、別疾患の進行、自殺、患者自身の危険行動、犯罪行為等)─がある。

また、④転倒・転落、誤嚥、隔離・身体拘束・身体抑制、褥瘡、食事・入浴サービス─なども通常は『医療起因性』はないと考えられるが、他の積極的医療行為が介在して発生したものについては、『医療起因性』に該当するとされており、『医療起因性』ありとするか否かは管理者が判断することとなっている。一言で表すならば「自宅でも起こりうること」は『医療起因性』はないということである。

『提供した医療に起因』するとは、主に、手術・処置・投薬・検査・輸血等の積極的医療行為を提供した場合のことである。これは、医療法施行規則第1条の10の2第1項各号からも導き出され、医政発0508第1号通知にも示されている。

したがって、視診・聴診等の診察、誤診等は報告対象に該当しない。医療上の管理は『医療起因性』に該当すると考えられるが、これは積極的医療行為と一体となった管理と解釈すべきであろう。この『医療起因性』への該当の判断は、疾患の特性・専門性、医療機関における医療提供体制の特性・専門性によって異なる。医療機関で発生したものはすべて『医療起因性』があるなどという短絡的な考えを持たずに、冷静に論理的に検討すべきである。

小田原良治(日本医療法人協会常務理事・医療安全部会長、医療法人尚愛会理事長)[医政局長通知][積極的医療行為]

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