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【識者の眼】「マイナンバーと社会保障の権利の自動化」山下慎一

No.5186 (2023年09月16日発行) P.66

山下慎一 (福岡大学法学部教授)

登録日: 2023-09-05

最終更新日: 2023-09-05

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夏も終わりますね。皆さんは、今年の夏は花火を見られましたか。

さて今回は、No.5182で示した情報提供義務にかかわる問題を、マイナンバー制度を活用して解決する方法について、「権利の自動化」という視点から大胆に想像してみたいと思います。あくまで架空の話ですので、その点をご了承頂ければ幸いです。

◇ ◇ ◇

【ケース1:No.5160の事案をモデルにして】

Aさんの子どもであるB君が不調を訴え、病院で診察を受けた結果、小児がんであると診断されました。B君のカルテは、マイナンバーのシステムによりAさんの住む自治体に共有され、特別児童扶養手当の受給資格を満たすことが確認されました。

Aさんは、B君の治療費や、看病で仕事を休む際の経済的な問題で不安になっていました。そのとき、スマートフォンにマイナポータルから通知が来ました。画面を見ると、「Aさんのお子様(Bさん)の病状が受給資格を満たすため、来月より特別児童扶養手当(月額〇〇万円)をAさんの公金受取口座に支給します」とのメッセージがあります。Aさんは少し安心して、B君の看病の計画を立てることができました。

◇ ◇ ◇

【ケース2:No.5164の事案をモデルにして】

要介護認定を受けたGさんは、医療法人Lの運営する介護老人保健施設(老健)Mに入所したいと考えました。老健Mのケアマネジャーから説明を受け、Gさんは、医療法人Lと入所に関する契約を結ぼうとしています。契約にあたり、ケアマネジャーがタブレット端末でGさんのマイナンバーカードを読み取ります。そのデータは、介護保険の保険者(自治体)に即時に送付され、共有されます。

すぐにマイナンバーのシステムにより、Gさんの所得と課税状況に関するデータが照会され、Gさんは補足給付の対象者に該当することが判明しました。保険者から、ケアマネジャーのタブレット端末に、その旨の通知が来ます。ケアマネジャーはその場でGさんに、「食費と居住費が割引きされて、1カ月あたり○○円になりますよ」と伝えることができました。

◇ ◇ ◇

いかがでしょうか。これが、私の考える「権利の自動化」です。「とても便利だ!」と感じる方もいれば、「とても怖い……」と感じる方もいるでしょうか。

次回は、この点を、法的な観点から少し掘り下げてみたいと思います。

山下慎一(福岡大学法学部教授)[社会保障][マイナンバー][申請主義を超えて][権利の自動化][情報提供義務]

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