株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネットのその後」栗谷義樹

No.5173 (2023年06月17日発行) P.66

栗谷義樹 (山形県酒田市病院機構理事長)

登録日: 2023-06-05

最終更新日: 2023-06-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネット(日本海HCN)は2018年4月に域内の9法人で設立され、現在12法人と1地方自治体で構成、メンバーは13となっている。地区医師会など三師会が参加し、病院開設自治体も参加した連携法人としては珍しい構成である。

事業については地域医療構想、包括ケア関連の地方における持続性に関したものが主であるが、地域フォーミュラリや地域全体の費用管理など、いくつかユニークな事業も含まれている。最近の新しい事業計画として、日本海総合病院構内への不妊外来棟の建設、その中に地区三師会事務局の移転、中山間地への医療MaaS(mobility as a service)計画、などがある。

一方、日本海HCNは設立当初から参加法人の持分を原則すべて放棄することも勧めてきた。周知のように2006年の医療法改正で、その翌年度以降から持分あり医療法人の新規設立はできないことになり、14年度改正で認定医療法人制度が創設、17年度からは出資者の持分放棄に伴い法人への贈与税非課税措置導入、今般の全世代対応型の社会保障制度構築のための健康保険法等一部改正法における持分なし法人移行時の認定制度期限延長など、持分なしへの移行を国が強く促す流れは続いている。日本海HCNはこれまで、持分なしへの移行手順、手続き支援も行ってきたが、当初持分ありだった参加3法人は現在、持分なしへの移行がすべて完了している。特に最近は参加法人の事業再編、財務整理などの支援業務への日本海HCN連携推進室の関わりも大きくなり、新しい段階に入りつつある。

個別の法人による整理の場合、金融機関やファンド、リース会社などが仲介に入ることも多いが、地域に必要とされている事業や職員の雇用まで引き継がれない場合もあり、その影響も少なくない。特に我々のような地方では今後、医療、介護需要の急速な減少が予想され、地区医師会調査では10年後の地域診療所も後継者、医師高齢化の理由から38%減少するとの予測が出ている。大収縮時代の医療、介護の持続性に対し、連携法人全体で関わり支援する仕組みをいま模索しているところである。

栗谷義樹(山形県酒田市病院機構理事長)[持分なしへの移行]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top