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特集:自己免疫疾患としての円形脱毛症─発症機序と治療のup date─

No.5165 (2023年04月22日発行) P.18

原田和俊 (東京医科大学皮膚科学分野主任教授)

登録日: 2023-04-21

最終更新日: 2023-04-19

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1994年山梨医科大学卒業,2001年同学大学院卒業。02~05年米国スタンフォード大学皮膚科留学。20年より現職。皮膚真菌症,皮膚附属器疾患を専門とする。

1 円形脱毛症とは
・円形脱毛症は円形の脱毛斑を生ずる非瘢痕性の後天性脱毛疾患である。
・円形脱毛症に生じる脱毛斑は,毛組織に対する自己免疫反応によって形成される。
・発症すると寛解と増悪を繰り返し,慢性的に経過する。
・発症頻度は比較的高く,有病率は0.1~0.2%程度との統計もある。患者の男女差はなく,すべての年齢層に発症する。
・発症には遺伝的素因が関与する。円形脱毛症患者の一親等血縁者では,発症のリスクは通常人と比較し10倍程度になる。

2 円形脱毛症の発症メカニズム
・一般的にストレスが円形脱毛症の発症要因であるとされている。しかし,円形脱毛症の発症とストレスとの関連については,専門家の間でも議論がある。
・毛組織は免疫系からの監視を逃れるメカニズムを有している(免疫特権)。
・免疫特権が破綻すると毛組織に対する免疫反応が惹起され,その結果,炎症細胞が浸潤し毛包が破壊される。

3 円形脱毛症の病態
・円形脱毛症では組織学的に,下部毛包周囲へ炎症細胞が浸潤していることが観察される。
・下部毛包周囲に浸潤したリンパ球から分泌されるIFN-γが毛包上皮細胞の受容体に結合すると,JAK-STATを介して核内に情報が伝達される。
・IFN-γが毛包上皮細胞を刺激すると,リンパ球を活性化するIL-15が放出される。IL-15は細胞膜の受容体に結合し,浸潤しているリンパ球をさらに活性化する。IFN-γとIL-15によるポジティブフィードバックループが円形脱毛症の病態形成に重要である。

4 円形脱毛症の診断
・円形脱毛症では円形,類円形の脱毛斑が出現する。脱毛斑をダーモスコピーで拡大して観察すると,破壊された毛髪が認められる。
・脱毛斑は単発のこともあるが,多くの症例では多発する。
・脱毛は頭部の毛髪以外に眉毛,睫毛,須毛(髭),体毛などにも出現する。爪甲に点状の陥凹が認められる症例もある。
・脱毛を生じる疾患は多数あるが,円形脱毛症と鑑別が必要な疾患としては,トリコチロマニア(抜毛症),瘢痕性脱毛症,休止期脱毛症などが挙げられる。

5 円形脱毛症の治療戦略
・円形脱毛症は自己免疫疾患であるため,免疫を抑制することが治療の基本となる。
・脱毛斑がおおむね頭部の面積の25%以下の場合には,ステロイドの外用や局所注射が適応となる。
・急激に脱毛斑が拡大している急性期の症例では,ステロイドパルス療法をはじめとするステロイドの全身投与を考慮する。
・脱毛斑の面積が頭部の25%を超える円形脱毛症では,化学物質を塗布し皮膚炎を惹起させる局所免疫療法が適応となる。
・バリシチニブはJAK阻害薬であり,サイトカインのシグナル伝達を抑制することで免疫を抑制する。
・脱毛範囲が頭部の50%を超える症状固定期の脱毛症患者にバリシチニブを投与すると,40%程度に発毛が認められる。

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