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外リンパ瘻[私の治療]

No.5165 (2023年04月22日発行) P.47

池園哲郎 (埼玉医科大学耳鼻咽喉科教授)

松田 帆 (埼玉医科大学耳鼻咽喉科講師)

登録日: 2023-04-20

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  • 外リンパ瘻は内耳リンパ腔と周囲臓器の間に瘻孔が生じ,めまい,難聴のいずれもきたし,海外ではアブミ骨手術後,頭部外傷後に生じる疾患として知られていた。その後,急性感音難聴の原因としても注目され,わが国では突発性難聴の鑑別疾患として知られてきた。一方,海外では慢性めまいの鑑別疾患として知られている。難聴は突発性,進行性,変動性と様々であり,聴力レベルも軽度から重度まで一定していない。めまいの性状も回転性,浮動性など様々であり,臨床症状は多岐にわたる。

    ▶診断のポイント

    外リンパ瘻の症状は様々であり,臨床症状,聴覚・前庭検査のみでは診断できない。従来の診断基準では,「手術,内視鏡などにより蝸牛窓・前庭窓のいずれか,または両者より外リンパ,あるいは髄液の漏出を確認できたもの。または瘻孔を確認できたもの」が外リンパ瘻確実例とされていたが,内耳窓の瘻孔を確認できることは少なく,液体の流出の確認により外リンパ瘻と診断していることが多かった。しかし内耳窓窩には周囲から滲出液などの液体が流入するため,外リンパの「流出所見」とは,実際には液体の貯留をみていることが多いという問題があった。

    近年,外リンパ特異的蛋白であるCTP (cochlin-tomoprotein)検出検査が報告され,外リンパ瘻の生化学的検査として臨床応用されている。CTPは外リンパに特異的に存在するため,中耳からCTPが検出されれば外リンパの漏出が証明される。そこで,外リンパ瘻の診断基準が改訂され,「瘻孔が確認できたもの,もしくは外リンパ特異的蛋白が検出されたもの」が確実例の診断に必要な検査所見となった1)

    診断基準以外にカテゴリー分類も重要である。発症の誘因によりカテゴリー1~4に分類されており,カテゴリー4は誘因なく発症(idiopathic)した症例である。現在の診断基準では,(圧)外傷を契機に発症していなければ確実例とはならず,カテゴリー4の取り扱いが難しい。しかし,誘因なく発症したと考えられる症例も,誘因と発症が同時ではないだけで,過去の(圧)外傷が原因になっている可能性もあるため,外リンパ瘻に矛盾がない症状があれば外リンパ瘻と診断している。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    瘻孔は自然閉鎖する可能性もあるため,急性期例ではまず保存的加療を行う。一方,慢性にめまいが持続している症例や聴力変動が持続している症例では,瘻孔が自然閉鎖する可能性は低く,症状に応じて手術治療を検討する。

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