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頭蓋底骨髄炎(SBO)の現状について

No.5163 (2023年04月08日発行) P.52

堀井 新 (新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野教授)

高橋邦行 (宮崎大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 教授)

登録日: 2023-04-09

最終更新日: 2023-04-04

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  • 頭蓋底骨髄炎(skull base osteomyelitis:SBO)は,古典的には免疫低下患者において,緑膿菌による難治性外耳炎が骨破壊性に進行し死に至ることもある疾患と言われていますが,最新の現状,特に診断基準や病期,標準治療に関してご教示下さい。
    宮崎大学・高橋邦行先生にご解説をお願いします。

    【質問者】堀井 新 新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野教授


    【回答】

    【SBOは高度の頭痛,頭蓋底骨を破壊する炎症性疾患で,長期抗菌薬治療が必要である】

    SBOは,古くは悪性外耳道炎,壊死性外耳道炎と呼ばれていた病態です。典型例では,高齢糖尿病患者に生じる骨壊死を伴う難治性外耳道炎で,緑膿菌が起炎菌となります。本疾患は外耳道炎のみにとどまらず,頭蓋底骨に拡大,骨破壊を生じ,脳神経麻痺を呈することもあるため,SBOと呼ばれるようになりました。近年では高齢糖尿病患者に限らず,ステロイド,免疫抑制薬を服用しているcompromised hostに起きたり,緑膿菌以外の細菌,真菌が原因となったり,外耳道炎がみられなかったりする非典型例もあり,病態は複雑化しています。

    本疾患の特徴は高度の耳痛,頭痛を訴えることです。鑑別診断として挙げるべき悪性腫瘍よりも痛みは高度であることが多く,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)でコントロールができずに,麻薬性鎮痛薬が必要になることもあります。また,炎症性疾患であるにもかかわらず,白血球数,CRPの上昇などの炎症反応は比較的軽微であり,CT,MRIで錐体骨,斜台の骨破壊と,周囲の軟部組織の肥厚を示すことから,聴器癌,上咽頭癌といった悪性腫瘍と誤診されることがあります1)。外耳道に肉芽を生じることも多く,その場合は必ず生検を行い悪性腫瘍の鑑別が必要です。本疾患の診断では,症状,画像上の特徴をふまえて鑑別診断を進め,総合的に診断する必要があります2)

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