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後には退けない屋内完全禁煙化 [お茶の水だより]

No.4819 (2016年09月03日発行) P.17

登録日: 2016-10-18

最終更新日: 2016-10-19

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▶国立がん研究センターが日本人を対象とした研究に限定して行ったメタ解析により、受動喫煙で肺がんリスクが1.3倍上昇することが確認された。同センターはがん予防の指針「日本人のためのがん予防法」を改訂。受動喫煙による肺がんのリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」へ引き上げた。受動喫煙による乳がんのリスク評価も、データが追加されたことから「可能性あり」へ引き上げた。
▶受動喫煙と肺がんの関連を世界で初めて指摘したのは、故・平山雄氏が1981年に発表した論文。その後、国内外の激しい論争を経て2004年、国際がん研究機関(IARC)が環境たばこ煙の人に対する発がん性を認定。06年には米国サージョン・ジェネラルの報告書で因果関係が認められた。
▶日本は世界に先駆けて受動喫煙の健康影響に気付いた国だが、防止対策の面では世界の後塵を拝している。五輪開催に当たり、治安と感染症が不安視されていたブラジルでさえ罰則付きの屋内完全禁煙の規制を定めているが、日本では屋内外とも「禁煙または分煙」の努力義務があるのみだ。
▶メタ解析の結果について8月30日に会見した同センターがん対策情報センターの片野田耕太氏は、「科学を制度に還元するプロセスの遅さは恥ずべきこと」と嘆いたが、「対策を打つのに遅すぎることはない」とも述べている。がん対策情報センター長の若尾文彦氏も「リスク評価改訂は『もう後には退けない』というメッセージ」としている。
▶エビデンスレベルの高いメタ解析結果が出た意義は大きい。これまで罰則付きの屋内完全禁煙を定めた法案は次々に廃案・修正されてきたが、政府には“後に退けない”覚悟による受動喫煙防止対策の加速を望みたい。

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