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【識者の眼】「2033年のプライマリ・ケアを夢想する」松村真司

No.5158 (2023年03月04日発行) P.59

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2023-02-14

最終更新日: 2023-02-14

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2023年は新型コロナ感染症の第8波で始まった。感染者数は徐々に減少してはいるものの、医療を巡る環境はまだまだ厳しいものがある。元気が出る話題が少ない中なので、今回は未来志向の話題を提供してみたい。

今年は3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)2023、9月のラグビーのワールドカップ開催といった大きなスポーツイベントが予定されている。昨年のサッカー日本代表の活躍も記憶に新しいが、こちらも日本チームの活躍を期待したい。また5月には被爆地・広島でG7サミットが開催予定である。憲法前文にある「われらは平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」の理念を、少しでも具現化できるようにと願う次第である。

さて、さらに遠くまで焦点を伸ばし、10年後、2033年のわが国の医療、特にプライマリ・ケアがどのようなものになっているかについて考えてみたい。

少子高齢化はさらに進んでいるだろう。医学・医療の技術の進歩も止まらない。特に、情報技術の進歩は社会のありように大きな影響を与えるだろう。医療においても、これら情報の集積と活用がより進み、好むと好まざるとにかかわらずデータに基づいた管理が進んでいくだろう。特に、プライマリ・ケアの現場で行われている日々の判断に対する外部からの影響はこれまで以上に大きなものになっているだろう。と同時に、これらへの過度の依存が、新たな課題を地域にもたらしていると思われる。

多くの単純な判断がAIによって置換されていく一方、複雑な状況における判断がより問われていくことだろう。さらに、これらの情報技術へのアクセスの有無が、新たな格差を生む可能性もある。これらの技術を使いこなせるかどうかも重要だが、今後も人々から一定の信頼を地域の医師が得ていくには、適度の距離感をもって関係を構築し、より人間的な判断を行うことが求められてくるだろう。地域の医師の在り方そのものが問われる10年になるのかもしれない。

今から10年前の2013年は、東京五輪の開催が決定し、NHKの朝ドラ「あまちゃん」が話題になった頃だった。その後の10年は、スマートフォンが普及し、SNSが拡大した時間だった。10年後のプライマリ・ケアの姿はどのような形になっているだろうか。

松村真司(松村医院院長)[10年後の医学・医療][情報技術の進歩]

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