株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【文献 pick up】SGLT2阻害薬で尿路結石のリスク低?

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-02-09

最終更新日: 2023-02-09

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

血糖降下薬として開発されながら腎保護作用や心保護作用も明らかになり、適応症が増えていくSGLT2阻害薬だが、さらに新たな可能性を示唆するデータが現れた。「尿路結石」の抑制である。KI Rep誌に阿南 剛氏(四谷メディカルキューブ、東北医科薬科大学)らが23日付で報告したリサーチレター を紹介したい。

解析対象は、日本にてDPC病院を受診した男性570万例余と女性620万例強である。これらの匿名診療等関連情報(DPCデータ)を横断解析した。

まず糖尿病と尿路結石の関連を見ると、糖尿病診断例では非診断例に比べ、尿路結石診断の割合が有意に高かった。男性におけるオッズ比(OR)は1.1295%信頼区間[CI]1.101.13)、女性では1.701.671.73)である。

次に糖尿病例に限定し、血糖降下薬と尿路結石診断の関連を検討した。

するとSGLT2阻害薬「服用」例では「非服用」例に比べ尿路結石ORが、男女とも有意に低値となっていた(男性:0.95、女性:0.91)。

対照的にDPP-4阻害薬やSU剤、グリニド系薬、グリタゾン系薬、αグルコシダーゼ阻害薬の服用例ではいずれも非服用に比べ、男女を問わず尿路結石ORは有意高値だった。

SGLT2阻害薬は糖尿病以外にも使用されるため、それら非糖尿病例でも検討したところ、男性ではやはり「服用」に伴い「非服用」に比べ尿路結石OR0.42の有意低値となっていた。一方女性では、0.90の低値傾向にとどまった(有意差なし)。

SGLT2阻害薬使用例における尿路結石低頻度は、外国コホートにおけるGLP-1受容体アゴニストとの経時的比較でも報告されており[Kristensen KB, et al. 2021、阿南氏らはSGLT2阻害薬が尿路結石を減少させた可能性を考えているようである。

機序としては、ラットで確認されているSGLT2阻害薬の抗炎症作用[Anan G, et al. 2022、あるいはpH上昇作用の可能性を指摘している。

なおSGLT2阻害薬群は尿路結石リスクを減少させないと結論する、ランダム化比較試験27報(55000例強)を対象としたメタ解析も存在する[Cosentino C, et al. 2019(阿南氏らはサンプル数が十分でなかった可能性を指摘)。また米国有害事象自主的報告データベースの解析からは、SGLT2阻害薬に伴う尿路結石リスク増加の可能性を示唆する報告もある[Zhou X, et al. 2021

結論は、現在進行中のSGLT2阻害薬をプラセボと比較中のランダム化比較試験"SWEETSTONE"の結果を待たねばならないようだ[ClinicalTrials. gov

本研究は日本学術振興会と公益財団法人鈴木謙三記念医科学応用研究財団からのサポートを受けた。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top