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咽後膿瘍[私の治療]

No.5155 (2023年02月11日発行) P.53

梅野博仁 (久留米大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座主任教授)

登録日: 2023-02-13

最終更新日: 2023-02-07

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  • 咽後膿瘍は,咽頭後壁と頸椎前面における間隙での膿瘍形成である。上気道の感染や外傷によって咽後疎性結合織中の内・外側咽頭後リンパ節感染から膿瘍を形成するため,気道狭窄や縦隔膿瘍,静脈血栓,化膿性脊椎炎などの重篤な合併症を引き起こす。罹患年齢は4歳以下が多いと報告されてきたが,年長児や成人の非典型例や軽症例が増加している1)。咽頭後壁と頸椎前面の間は,咽頭後間隙,危険間隙,椎前間隙にわけられ,狭義には咽頭後間隙に膿瘍を形成したものが咽後膿瘍であるが,いずれの間隙に生じた膿瘍でも咽後膿瘍として扱われている2)。咽頭後間隙の後方には疎性結合織を介して危険間隙があり,下方の縦隔に連続しているため,感染が波及すると縦隔膿瘍へと移行しやすい。
    咽後膿瘍は重篤な急性感染症であり,早急な気道確保と全身管理を行い,膿瘍の切開排膿と起炎菌に合致した抗菌薬投与が治療のポイントとなる。

    ▶診断のポイント

    症状は発熱,咽頭痛,頸部痛,摂食障害,呼吸障害だが,乳児では咽頭痛を訴えず診断が遅れることが多い。

    喉頭内視鏡検査で,咽頭粘膜の発赤と片側の咽頭後壁の膨隆を確認する。膿瘍形成を疑う場合は造影CT検査を行う。膿瘍辺縁軟部組織の浮腫辺縁の明瞭な造影効果は特徴的な所見である。血液検査は必須であり,白血球増多とCRP上昇を確認する。

    鑑別疾患として石灰沈着性頸長筋腱炎,川崎病,咽頭結核などが挙げられる。石灰沈着性頸長筋腱炎や咽頭結核では炎症所見は軽度であり,川崎病や石灰沈着性頸長筋腱炎では,造影CT検査で膿瘍辺縁軟部組織の浮腫辺縁の明瞭な増強効果は認めない。

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