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【識者の眼】「次のパンデミックに対する備えはできているか」栁原克紀

No.5155 (2023年02月11日発行) P.66

栁原克紀 (長崎大学病院臨床検査科/検査部教授・部長)

登録日: 2023-01-18

最終更新日: 2023-01-18

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まって3年が経過した。諸外国は、with/after コロナの状況となり、経済活動も従前どおり行われている。昨年11月にオーストラリアで開催された国際学会に参加したが、マスク着用者はごく少数であり、ホテルやレストランでも体温確認や手指消毒など一切行われていなかった。わが国では感染率が低いため諸外国と同様にはいかないが、少しずつwith/after コロナの社会環境に移行することが予想される。しかしながら、新興感染症は5〜10年おきに出現することが懸念されており、今回のパンデミックを貴重な教訓として、今後の対応を考えておく必要がある。

医療面では、新規病原体の解析・情報提供体制、ワクチン、治療薬、検査診断薬が重要である。わが国でも高度安全試験施設(BSL-4:biosafety level-4)が国立感染症研究所に加えて長崎大学でも稼働見込みであり、いずれ新規病原体の情報収集において大きな役割を果たすであろう。その稼働と併せて正しい情報を的確に伝える体制を構築すべきである。感染症のワクチンや治療薬も大切である。開発スピードに関しては、外資系のメガファーマに負けるのは仕方ないが、国産ワクチン・治療薬を作製できる技術は維持しておくべきである。国内製薬企業は積極的に取り組んでほしい。

いくつかのメーカーがワクチンや新薬を開発してきていることは望ましいことだが、国としても継続的な支援体制を構築すべきである。ぜひとも「国防」の一環として取り組んでいただきたい。

感染症対策に関する教育も進めるべきだ。基本的な感染対策をしながら、診療に携われる医師や医療関係者が不足していることが明らかになった。人材を育成するためには、学生教育、臨床実習ならびに臨床研修において体得できるような教育プログラムが必要である。

わが国におけるコロナの終息はもう少し先になりそうだが、次のパンデミックに対する準備は開始すべきではないだろうか。

栁原克紀(長崎大学病院臨床検査科/検査部教授・部長)[新型コロナウイルス感染症敗血症の最新トピックス

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