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線毛機能不全症候群を疑うポイントと対応は?

No.5151 (2023年01月14日発行) P.51

森 恵莉 (東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室講師)

竹内万彦 (三重大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科教授)

登録日: 2023-01-11

最終更新日: 2023-01-10

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  • 慢性副鼻腔炎や滲出性中耳炎はよくある疾患ですが,中には典型例ではない未診断の線毛機能不全症候群も存在していることが予想されます。診療上,本疾患を疑うポイントと対応についてご教示下さい。三重大学・竹内万彦先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    森 恵莉 東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室講師


    【回答】

    【長引く湿性咳嗽が最も重要な症状である】

    新生児期を除けば,長引く湿性咳嗽が線毛機能不全症候群(以下,本症候群)を疑う最も大切な症状です。典型例ではいつも痰が絡んでいて,症状がない日はないと言われています。呼吸器症状は年齢により異なります。新生児では多呼吸,咳嗽,肺炎,無気肺がみられ,満期産で出生した75%が新生児呼吸窮迫となり,新生児集中治療室(NICU)にて数日から数週の酸素投与を受けるとされています。成人では,気管支拡張症・細気管支炎をきたすとされており,胸部X線などの画像所見で気管支拡張症の所見がみられます。

    本症候群では,様々な重症度の慢性鼻副鼻腔炎をきたします。鼻腔所見では鼻茸のない,粘性鼻汁を特徴とした好中球性の鼻副鼻腔炎を呈します。副鼻腔CTでは蝶形骨洞と前頭洞の低形成が特徴とされていますが,これは全例にみられるわけではありません。軽度の粘膜肥厚を認める症例から,手術を行っても症状が軽快せずに再手術を要する症例まで,鼻副鼻腔炎の重症度は様々です。

    本症候群を疑ったら鼓膜をよく観察します。基本的に滲出性中耳炎が特徴ですが,光錐が消失していて軽度の陥凹がみられる程度のこともあります。鼓膜換気チューブが挿入されていたり,その後遺症として鼓膜穿孔をきたしている場合もあります。

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