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扁桃肥大・アデノイド増殖症[私の治療]

No.5149 (2022年12月31日発行) P.51

井下綾子 (順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座准教授)

登録日: 2022-12-31

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  • 咽頭には口蓋扁桃,咽頭扁桃(アデノイド),耳管扁桃,咽頭側索,舌扁桃,孤立リンパ節などのリンパ組織が環状に存在し,ワルダイエル咽頭輪と呼ばれる。口蓋扁桃とアデノイドは,幼児期では細菌やウイルスの侵入防御の生理的役割を持ち,免疫機能が確立した就学以降頃は退縮するため,年齢を考慮した評価を行う。扁桃組織の肥大への関与因子は,個々の免疫能や素因・遺伝,炎症,内分泌,環境,薬物などがある。閉塞性睡眠時無呼吸症(obstructive sleep apnea:OSA)の合併や腫瘍性増殖を疑う場合は治療にあたる。

    ▶診断のポイント

    扁桃肥大やアデノイド増殖で上気道が閉塞し,以下の症状の原因であるかを見きわめる。睡眠中のいびき・無呼吸,構音障害,摂食・嚥下障害,扁桃炎歴,滲出性中耳炎歴を問診する。反復性扁桃炎では口蓋扁桃が徐々に増大することもある。アデノイド増殖では鼻閉や滲出性中耳炎の原因となる。小児では,保護者からの鼻症状や開口癖の聴取も不可欠である。睡眠中のいびき・無呼吸は,年齢を問わず患者が無自覚なことが多く,家族からの情報が重要である。

    口蓋扁桃は舌圧子で舌を押し下げれば,視診が可能である。肥大度は中咽頭腔への突出度で評価し,両側の口蓋扁桃が口峡の75%以上を占める場合は最重症度の扁桃肥大である(Brodsky分類)。アデノイドの評価には鼻咽腔内視鏡や画像検査(単純X線,CT,MRI)が必要である。耳管隆起や鼻中隔までアデノイドが接するかどうかが評価のポイントとなる。

    OSAでは睡眠中のいびき・無呼吸,起床時頭重感,日中傾眠などに加え,小児は成長障害,胸郭変形,夜尿,注意力散漫などの心身の発育に影響し,成人は高血圧や心血管疾患を合併することがある。したがって,OSAを疑う場合は睡眠検査での確定診断が望ましい。

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