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拡張型心筋症[私の治療]

No.5149 (2022年12月31日発行) P.42

安斉俊久 (北海道大学大学院医学研究院循環病態内科学教室教授)

登録日: 2022-12-28

最終更新日: 2022-12-26

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  • 拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)は,左室のびまん性収縮障害と左室拡大を特徴とする疾患群であり,確定診断においては,冠動脈疾患,高血圧や弁膜症に続発する左室収縮機能障害,様々な全身疾患に伴う二次性心筋症を画像,病理組織検査によって除外診断することがポイントになる1)

    ▶診断のポイント

    呼吸困難,浮腫,易疲労感,食思不振や悪心など心不全に伴う症状や動悸,めまい,失神などの不整脈に伴う症状を認めるが,無症候性に経過することも少なくない。聴診では,Ⅲ音や二次性僧帽弁逆流による汎収縮期逆流性雑音などを聴取する。心電図では特異的所見を認めないものの,左室高電位,R波減高,異常Q波,QRS延長,脚枝ブロック,ST-T変化,心室期外収縮などを呈し,心エコーでは左室拡大とびまん性壁運動低下を認め,血液検査では,ナトリウム利尿ペプチド(BNP,NT-proBNP)値の上昇を認める。心臓MRIは,心機能評価とともに遅延造影MRIのパターンにより虚血性心筋症や二次性心筋症と鑑別する上で有用である。冠動脈造影あるいは冠動脈CTにて冠動脈疾患を除外し,心内膜心筋生検によって二次性心筋症を除外する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性心不全を呈している場合には,うっ血および低灌流の有無を評価した上で,血行動態に応じた利尿薬,血管拡張薬,強心薬による治療を行う。慢性期には,交感神経,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の賦活化遷延による悪循環からの離脱を図るために,β遮断薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA),ナトリウムグルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬による治療を行う。これらによっても症状の改善や左室駆出率(EF)の改善が得られなければ,ACE阻害薬やARBに替えてアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)を用いる2)

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