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慢性副鼻腔炎[私の治療]

No.5148 (2022年12月24日発行) P.46

近藤健二 (東京大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学准教授)

登録日: 2022-12-25

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  • 慢性副鼻腔炎は副鼻腔の炎症により鼻閉,膿性鼻漏,後鼻漏,咳嗽などの呼吸器症状や頭痛,頬部痛,嗅覚障害が3カ月以上持続する疾患である1)。痛みはそれほど強くないが,粘膜の不可逆的な肥厚や鼻茸の形成をみることがある。慢性副鼻腔炎の多くは急性副鼻腔炎が個々の患者の鼻の解剖学的な問題や栄養および生活環境,遺伝的要因などで遷延化して悪循環に陥ることが原因と想定されている。

    ▶診断のポイント

    臨床症状に加えて,前鼻鏡や内視鏡を用いた鼻内の観察,および画像検査で診断される。罹患洞からの膿汁流出に加えて鼻茸の形成を伴うこともある。CT画像上,罹患洞には粘膜肥厚,液体貯留像を認めるが,通常骨破壊像は伴わないことで腫瘍性疾患,囊胞性疾患と鑑別される。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    慢性副鼻腔炎では,起因菌として急性副鼻腔炎の主要な起因菌である肺炎球菌,インフルエンザ菌,モラクセラ・カタラーリスに加えて緑膿菌や嫌気性菌も関与している。感染が持続する全身・局所要因があることが多いため,抗菌薬治療単独では完治しないことが多く,マクロライド療法2)や食塩水による鼻洗浄をまずは2~3カ月継続する。これで改善がみられない場合は手術療法3)を組み合わせる。

    マクロライド少量長期療法は,1991年の菊地・洲崎らの報告2)以降国内で導入が進み,感染性の慢性副鼻腔炎の標準的治療法となっている。治療においては①通常効果が発現して安定するまで2~3カ月を要する,②過分泌タイプ(後鼻漏)の慢性副鼻腔炎や術後治療に有効,③マクロライドに感受性を持たない菌が検出されている症例でも有効,④14員環マクロライドのみにある作用であり,16員環マクロライドには作用がない,などの点に留意する。通常は抗菌薬として処方される常用量の半量を使用する。

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