株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

中咽頭癌[私の治療]

No.5146 (2022年12月10日発行) P.49

安松隆治 (近畿大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室主任教授)

登録日: 2022-12-08

最終更新日: 2022-12-06

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 中咽頭は解剖学的に嚥下,音声に関わる重要な部位であり,前壁(舌根),側壁(扁桃),上壁(軟口蓋),後壁,の4つの亜部位にわけられる。中咽頭癌発症のリスクファクターとして,従来から指摘されている喫煙,飲酒に加えてハイリスク型human papilloma virus(HPV)感染の関与が明らかになっている。近年はHPV陽性癌の増加が世界的に顕著である。
    HPV陽性癌と陰性癌では病態が異なる。HPV陽性癌は,主に側壁,前壁に発生し若い年齢層に多い。一方HPV陰性癌は,すべての亜部位において発症する。また,HPV陰性癌では,field癌化の影響で他の頭頸部領域や食道,肺などを含めた重複癌が多いのが特徴である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    初期には,咽頭違和感などの軽微な自覚症状しか有しないことが多い。進行すると嚥下時痛,構音障害,耳周囲への放散痛,開口障害,唾液への血液混入などが出現する。リンパ節転移をきたした結果,頸部腫脹を自覚する場合も少なくない。

    【検査所見】

    病変は経口的に視認できる場合もあるが,咽喉頭内視鏡検査を経口的,経鼻的に行った上で,進展範囲を確認する必要がある。組織学的に扁平上皮癌が多くを占めており,腫瘍からの組織生検によって確定診断を得ることができる。

    なお,2017年にUICCのTNM病期分類が改訂され,中咽頭癌ではHPVの代用マーカーであるp16免疫染色結果に応じて,p16陽性癌と陰性癌で別々の分類を用いることとなった。したがって,従来のHE染色に基づいた病理組織診断に加えて,免疫組織染色でp16発現の有無を確認する必要がある。

    進展度(病期診断)を確認するためには造影CT,MRI,頸部超音波検査,PET-CTを行う。また,重複癌の有無を確認するために,上部消化管内視鏡による食道,胃などのスクリーニング検査を行う。

    残り1,110文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top