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【識者の眼】「生きるためのリスク」小倉和也

No.5148 (2022年12月24日発行) P.57

小倉和也 (NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)

登録日: 2022-12-05

最終更新日: 2022-12-05

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新型コロナの抗原検査キットに引き続き、インフルエンザも抗原検査キットの購入が可能になるようだ。検査結果の解釈には確率的な理解が必要だが、一般に確率の考え方をうまく説明するのは難しい。ワクチンや薬の効果と副反応・副作用についてはもちろん、インフルエンザやコロナの診断がそもそも検査だけで決められるものではなく、総合的な確率的判断であることを理解してもらうことは相当に困難を極める。

特に日本人は絶対的な安全・安心を求めたり、検査で完全に白黒をつけられるはずだと思う傾向が強い。何かをする時の成功確率やリスクについても、「安全と水はタダ」といった環境に慣れ、リスクと言えば地震や台風など災害のイメージが強い日本人は、とらえ方が欧米人とは異なる可能性も指摘されている1)

生物として生きる上で周囲の環境は常に変化しており、それに応じて変化し対応していかなければ生存することは難しくなる。地球温暖化の問題においても、日本人にはこのような緊張感が比較的希薄であるように思えてならない。また、社会的な生き物としての人間が常に変化する社会で、何事も確率でしか語れない人生をより良く生きようとするのであれば、何らかの選択をする上でリスクは必ず伴うものであろう。にもかかわらず、スポーツからビジネス、政治に関する意識も含め、日本人は往々にして、何か新しいことをすることで必然的なリスクを背負うよりも、何もしないことで起こる結果を甘んじて受け入れることで自らの責任を回避したと考える傾向があるように見受けられる。

If you don’t risk anything,you risk EVERYTHING.
(何もリスクを冒さないことはすべてをリスクに晒すことだ)John Spence

地域包括ケアや地域共生社会実現への取り組みや、コロナ対策の過程で、「現状を変えない力」が少子高齢化をはじめとする国や地域の問題の根底にあることを実感してきた。個人としても社会としても生存・繁栄のためにはリスクを取りながら変わっていかなければならいという認識を持ち、必要な変化が起きるよう、できることを続けていきたい。

【文献】

1)木下冨雄:行動計量学. 2016;43(1):5-12.   

   https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbhmk/43/1/43_5/_pdf

小倉和也(NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[確率的判断必要な変化]

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