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【識者の眼】「補完代替療法の講義を受けた学生の反応」大野 智

No.5149 (2022年12月31日発行) P.61

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2022-11-28

最終更新日: 2022-11-28

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先日、本学医学部医学科4年生を対象に「補完代替療法」の講義を行う機会があった。背景には、医学教育における国際認証の評価基準に「補完医療との接点を持つこと(※補完医療には、非正統的、伝統的、代替医療を含む)」が、カリキュラムで確実に実施すべき水準のひとつとして挙げられていることがある(詳細はNo.5046も参照頂きたい)。

最近の学生は真面目なのか、あるいは筆者の講義に興味があったのか、欠席者はほぼなく、また居眠りする学生もいなかった。講義の感想を課題レポートとして提出してもらったところ、多くの学生が「“補完代替療法”という言葉を初めて聞いた」とのことであった。しかし、健康食品、ヨガ、アロマセラピーなどが該当することを説明すると、イメージをとらえることはできたようである。また、基礎・臨床医学の知識が身についてきた学年ということもあり、補完代替療法を科学的根拠のない、西洋医学とは対極的なものととらえている節があったが、補完代替療法に関するランダム化比較試験の報告が近年増加している現状を講義で紹介したことで、驚いた旨の感想を書いている者もいた。

講義の学習目標のひとつとして、患者から補完代替療法について相談を受けたときに適切な対応ができることを提示した。これまで本欄(No.50535085でも触れてきた、「頭ごなしに否定する」「患者の自己判断に任せる」といったNGパターンや「標準治療がベストです」といった情報欠如モデルの限界点について説明した。その上で科学的根拠に基づく医療(EBM)を実践していく上で必須な要素である「患者の意向・行動(patient’s preferences and actions)」を丁寧に聴き取ることの重要性について解説をしたところ、補完代替療法の相談対応のみならず、一般診療における患者とのコミュニケーションの課題についても感じ取った学生が多く確認された。

話は変わるが、医学教育国際認証における他大学の自己点検評価報告書を調べる機会があり「補完医療との接点を持つこと」の項目を確認してみたところ、ほとんどの大学では「漢方医学」のみを挙げていて、国際基準で意図されている『補完医療』の講義を実施している大学は皆無であった。ただ、今後の改善計画において、補完代替療法(統合医療)に関する講義の必要性が、一部の大学で触れられていた。今後の展開に期待したい。

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法

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