加齢性難聴は感音難聴であり,末梢の感覚器の機能低下,聴覚中枢の機能低下,認知機能全般の低下が関与している。原因として最も重要な位置を占めるのは,内耳機能の低下である。加齢性難聴の特徴としては,純音聴力検査の聴力閾値上昇,すなわち小さな音が聞こえにくくなることであり,一般的に高音部から難聴が進行する。そして語音聴力検査の最高語音明瞭度が低下する。内容が聞き取れない,早口が聞き取れない,雑音下での会話が聞き取れない,音源定位がしにくいといった症状が生じてくる。
純音聴力検査を行って難聴の種類,聴力閾値を把握するのは必須である。伝音難聴がある場合は,外科的治療で改善する可能性がないかを画像検査(CT)などで確認し,語音聴力検査も行う。身体障害(聴覚障害)に該当するかを判定する上でも,純音聴力検査と語音聴力検査は必要である。
現在のところ根本的な治療はなく,対症療法として補聴デバイスを使うこととなる。純音聴力検査の平均聴力レベルが40dBを超えるようになると,日常生活上の不便度が上がってくる。就労の有無などの生活環境によって不便度は異なり,個人差はあるが,平均聴力レベル50dBを補聴介入の目安としている。ただし,身体障害(聴覚障害)に該当する聴力レベルでなければ自費での購入となることは留意しておく必要がある。両耳で聴くことが雑音下での聞き取りや音源定位に関わるため,基本的には両耳とも40dB以内となるよう補聴することを目標にする。補聴器装用開始直後は今まで聞こえなくなっていた(忘れていた)様々な音が入ってくるため,うるさく感じる場合もある。
難聴が進行し,純音聴力検査の平均聴力が70dB以上,語音聴力検査で補聴器を装用しても最高語音明瞭度が50%以下となった場合は,人工内耳の適応を考慮する。その場合,必ず頭部MRIを撮影し,中枢病変の有無,脳萎縮の程度を確認しておく。人工内耳は手術でインプラントを埋め込んだ後,体外器(サウンドプロセッサ)を装用して聞く補聴システムであり,手術後にリハビリテーションを継続していかなければならない。
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