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【識者の眼】「”みなし陽性”という言葉が気持ち悪い」薬師寺泰匡

No.5133 (2022年09月10日発行) P.57

薬師寺泰匡 (薬師寺慈恵病院院長)

登録日: 2022-08-31

最終更新日: 2022-08-31

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「みなし陽性」という言葉が普通に使われるようになった。しかし、今でも慣れないし気持ち悪い言葉である。あくまでも診察や検査所見をもとに医師が「COVID-19である」と診断しているのであって、「検査が陽性である」とみなしているわけではない。みなし陽性はそもそも疑似症と呼ばれており、これはこれでまるで別の疾患のようでもあるのだが、病原体の証明をもって感染症の診断を行うという原則を大切にし、医師として診断はしたが、疑似症として登録をしている。コロナ禍ではPCR検査が普及し、きわめて高い特異度の検査であることから、陽性=確定診断という、ある意味では雑な対応がまかり通ってしまうようになってしまった。そして、コロナ患者はいつしか陽性者と呼ばれるようになり、検査なしには病気なし、という状況に至る。非常に困るのが、みなし陽性や、陽性者という言葉が非医療従事者に生む誤解である。

今や当院が立地する岡山県では人口の1%以上が感染者として療養中であり、凄まじく罹患率は高まっている。家族が感染者であったり、自身に咽頭痛などの特徴的な症状があったりするのであれば、相当に検査前確率は高まる。仮に救急搬送の理由が嘔吐下痢や吐血、交通外傷であっても、COVID-19を合併している可能性も相応に高くなり、数日に1回はこうした例を目にするレベルである。むしろ検査のタイミングによっては、PCRが陰性でもCOVID-19の初期症状であるということも珍しくはなくなってきており、検査陰性だけどみなし陽性というようなわけがわからない状況も生まれてきかねない。

このような状況ではあるが、患者の症状や背景を勘案して、COVID-19であると診断したのちに、検査の必要性は乏しいことを患者に説明をすると、様々な反応が返ってくる。みなしということはそうではないということか? 疑似症ということは確定診断ではないのか? 診断は診断で、別に検査だけしてもらえないか? 検査をしてもらいに来たのに検査がいらないというのはどういうことか?

病院はおみくじ会場ではない。しかし毎回説明を求められても現場としては徒労感が募るばかりである。今年は、国際交流も盛んになっており、インフルエンザの流行も十分考えられる。更なるカオスになる前に、できる限り誤解を解いておく必要があるのではないか。

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)[新型コロナウイルス感染症]

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