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【識者の眼】「人々に感謝の意を伝えよう」松村真司

No.5126 (2022年07月23日発行) P.58

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2022-07-06

最終更新日: 2022-07-06

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地域の医師として診療を行いながら、学校医・産業医として近隣の美術大学に長年従事している。新型コロナウイルス感染症が拡大して以降、刻々と変わる状況に翻弄されつつも対策に追われる日々を送ってきた。思い返せば、対面授業の中止とオンライン授業の全面的導入、学生・教職員に対する感染対策とメンタルヘルスへの対応、ワクチンの職域・学域接種の準備と実施、次々発生するクラスターへの対応とあわただしく走りぬいてきたこの数年間であった。オミクロン株への置換が進んだ今では、いかに通常の学校活動を再開するかが主体となっている。しかし、当キャンパスには演劇舞踊を専攻にする学部があるため、現在でも活動はかなりの制限が強いられている。関係者と知恵を絞りながら、感染対策と学校活動の両立をどう進めるか、頭を悩ませる日々が今も続いている。

これまで様々な団体が業種別の感染拡大予防ガイドラインを発出してきた。これらを参考にしてはいるものの、現場ではケースバイケースの対応をせざるをえない課題ばかりである。そもそも、医療側からすれば、三密の塊のような演劇舞踊における感染対策など不可能であるようにすら思えてくる。感染拡大の当初、世の中の風潮に対して自ら声を上げた著名な演劇人に対し、多くの批判が寄せられたことも記憶に新しい。もちろん、彼らが感染対策を軽視していたわけではない。ただ、自分たちの活動に誇りを持ち、演劇人としての意見を世に訴えていただけである。それに対し、私たちは医療側の意見を通すばかりではなかっただろうか。わが身を振り返っても反省するところは多い。

もちろん、苦境にあえいでいたのは彼らだけでない。観光業、飲食業を筆頭に、様々な業種、もっと言えば国民全体がパンデミックの影響を受けてきたのである。しかし、今後も感染対策を続けていくためには人々の協力は不可欠である。そこで今必要なことは、様々な面で私たちに協力し、ともに苦境を乗り越えてきた人々に対して感謝の意を表することではないだろうか。特に、医師を代表する集団である医師会には率先して明確なメッセージを発してほしい。

松村真司(松村医院院長)[新型コロナウイルス感染症]

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