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【識者の眼】「誰もが安心できる医療・福祉を現場から」小倉和也

No.5122 (2022年06月25日発行) P.59

小倉和也 (NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)

登録日: 2022-06-09

最終更新日: 2022-06-09

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米国公衆衛生局の医務総監がコロナ禍で顕著になった医療職のバーンアウト対策の提言1)を発表し、継続的な医療ケアの提供を可能にするためにも改革が必要であることを訴えた。人材確保や医療者の事務作業などの業務負担の軽減、暴力対策やメンタルケアを充実させたりするなどして、市民を守る医療者を、市民が守ろうと呼びかけている。

また同時期に英国では、プライマリ・ケアを包括的ケアへと移行させるための報告書2)が出された。地域の医療資源を統括するしくみを、予算も含めより包括的なものに変え、地域ごとの連携を促進する方向性が示されている。

コロナ禍も2年以上経過し、今後も見据え医療や福祉のあり方を見直す機運が各国で高まっている。

日本でも地域包括ケアシステムや地域共生社会の構築が進められている。医療者としても地域住民としても安心できる医療と福祉の仕組みを、持続可能な形として確立するための模索が、国ごと地域ごとに求められていると言える。

鍵を握る要素としていずれの国でも指摘されているのが、行政を含めた多職種・多組織での連携と、それを支えるICTによる情報共有の重要性である。コロナ禍のバーンアウトでは、コロナそのものへの対応だけでなく、連携や連絡、書類作成などの事務手続きの負担の影響が大きいことも指摘されてきた。米国では以前から医療現場における書類作業などの事務仕事を75%削減する目標が掲げられているようだが、可能な限りの削減と書式や入力作業の統一による効率化の必要性は、医療現場では日々感じるところである。

当院でも数年前に医療介護連携の情報共有や記録と連携ツールへの二重入力の解消などをめざした実証事業を行ったが、毎日のコロナ患者への対応においても、紙と電話とFAXでの連携や、二重三重の入力が、診療以上に負担となる状況が続いている。

地域共生社会の理念にあるように、支える側と支えられる側に分かれるのではなく、どの立場でも互いに支え合う必要があることは、医療福祉職と市民の間でも同様である。どちらの立場でも安心できる体制をつくるには、市民や現場で働く人たちの声が反映される必要があることを確認しておきたい。

【文献】

1)Addressing Health Worker Burnout.

   https://www.hhs.gov/surgeongeneral/priorities/health-worker-burnout/index.html

2)Next steps for integrating primary care: Fuller Stocktake Report.

   https://www.england.nhs.uk/publication/next-steps-for-integrating-primary-care-fuller-stocktake-report/

小倉和也(NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[バーンアウト対策]

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