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「臨床試験の批判的吟味が不可欠」【桑島J-CLEAR理事長が講演】

No.4823 (2016年10月01日発行) P.13

登録日: 2016-10-03

最終更新日: 2016-10-05

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「臨床試験の批判的吟味が不可欠」【桑島J-CLEAR理事長が講演】

小社より『赤い罠─ディオバン臨床研究不正事件』を9月に上梓した臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)の桑島巖理事長(写真)が9月25日、日本心臓病学会学術集会で「臨床研究論文不正裁判から学ぶこと」をテーマに講演し、臨床試験を批判的に吟味する重要性を強調した。
ディオバン臨床研究不正事件は、降圧薬ディオバンを用いた臨床研究のデータを改ざんした疑いでノバルティスファーマ社元社員が逮捕された事件。現在、東京地裁で公判が続いており、桑島氏は多くの公判を傍聴している。
桑島氏はディオバン事件の原因として、臨床研究の実施基盤が未整備だったことに加えて、研究者の問題として「臨床試験に対する知識不足」「統計学に疎い」「企業に対する依存」「モラルの不足」などを列挙。研究動機が探究心ではなく功名心や研究資金調達であり、論文数至上主義であったことも批判した。一方、医療への貢献よりも営利を優先する企業の姿勢も問題視した。
その上で、情報の受け手側の課題として「臨床試験の批判的吟味が不可欠」と強調。ディオバン臨床研究のJikei Heart StudyやKyoto Heart Studyはディオバン群が心血管イベントをそれぞれ39%、45%と大幅に抑制する結果だったことから、「日常臨床と乖離した結果には要注意」と呼びかけた。
さらに、高齢の患者は個別性が強いことから、今後の超高齢社会においては、エビデンスよりも医師の経験・技量と患者の特性が重視される「“in­dividual medicine”が強調される時代になる」との見通しを示した。

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