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【識者の眼】「子ども虐待診療の手引きの活用を」小橋孝介

No.5118 (2022年05月28日発行) P.56

小橋孝介 (鴨川市立国保病院医療参事)

登録日: 2022-04-28

最終更新日: 2022-04-28

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公益社団法人日本小児科学会は2022年3月、「子ども虐待診療の手引き 改訂第3版」1)を公開した。第3版では2014年に改訂された第2版から大幅な見直しが行われた。各項目とも内容がさらに充実し、「子どもの権利とアドボカシー」「体罰とその予防」「チャイルド・デス・レビュー」をはじめとする12の項目が新たに加わった。

今回の改訂では、子ども虐待診療において求められる基本的な概念・知識とあわせて、実際の対応におけるdos and don’tsが示されている。

2020年に医師臨床研修指導ガイドラインが改訂され、医師臨床研修の中で子ども虐待に関する研修の受講が必須化された。しかしながら、それまでは子ども虐待に関する研修の機会は限られており、医学部における卒前教育も含め、子ども虐待に関する知識を学ぶ機会がほとんどなかった。2019年に筆者が行った虐待対応研修会の参加者109名を対象とした調査では、約3割が子ども虐待に関する学びの機会が卒前・卒後ともなかったと回答した。

子ども虐待は通告窓口である児童相談所と市町村における相談対応件数を合わせると年間35万件超である。これは18歳未満の小児人口あたりで考えると、おおよそ50人に1人が1年の間に相談対応されていることになる。子ども虐待は決して稀な事象ではない。小児科医はもちろん、子どものいる家族に関わる可能性のあるすべての医療者が子ども虐待に気づき、支援につなげられるだけの基礎的な知識と技術を身につけていなければならない。

「いままで子ども虐待なんて出会ったことがない」「当院に来ている患者に虐待を受けている子どもや虐待をしている親はいない」という声を聞くことがある。医師としての長いキャリアの中で、これだけ頻度の高い子ども虐待を見たことがないということが起こりうるのだろうか。

本手引きは、子ども虐待への気づきから対応まで系統的に学ぶことができる。是非すべての臨床家に読んでもらいたい。

【文献】

1)https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=25

小橋孝介(鴨川市立国保病院医療参事)[子ども虐待][子ども家庭福祉]

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